ビタースウィートメモリー
「十代の頃ってさ、好きって思ったらすぐにアプローチしたり告白したり出来ていたよね。今考えたら、信じられないくらい行動力があった」
いきなり話しが変わったことに戸惑いながらも、悠莉は頷いた。
「うん。色んなことが未経験だったから手探りで、だからその分勢いがあったな」
「大人になると、体の傷だけじゃなくて心の傷も治りが遅くなるって、昔誰かが言ってた。それなりに恋愛経験積んで学習すると、自分が傷つくパターンも予測出来るようになるものね。すると、傷つくのが嫌で自己防衛に走ったり、自分の気持ちに気づかないふりをするようになる」
「ああ……身に覚えがありすぎる。大人の恋愛って、子供の頃に比べるとダメだった時のリスクがでかいんだよな」
笑おうとしても、顔の筋肉が動かない。
美咲の言葉が胸に刺さり、とにかく痛い。
「これからどうするかは置いといて、とりあえず小野寺くんとの付き合い方が変わっていく覚悟はしといたら?もう、今までと同じ関係じゃいられないんだからさ」
「そうだな……覚悟、しないとな」
いつになく暗い表情の悠莉を見て、美咲は大地の話しはそこで終わりにした。
「悠莉って仕事の時は大胆で強いけど、恋愛が絡むと臆病で消極的だからね。無理しないで、自分のペースで進めて」
入社してから彼氏がいたことがなく、たまに寄ってくる男も冷たくあしらう悠莉に、美咲は何か感じるものがあったのだろう。
しかし、詮索することなく、程よい距離感でいてくれている。
その気配りに、今はすごく救われている。