ビタースウィートメモリー
映画館のように薄暗い中でカラフルな色が飛び交う空間で、悠莉は好奇心丸出しであちこちを眺めた。
自分の分は自分で払うと言って財布を開いた悠莉をスルーして、吉田は二人分の料金を払った。
「今日一日、言うことを聞いてくれるんですよね?」
「なんか言葉尻とニュアンス変わってませんか?」
「気のせいでしょう」
凄みのある笑顔の吉田に押しきられ、悠莉はありがたく料金を払ってもらうことにした。
向こうが言い出したことだし、入口で揉めているのは時間の無駄だ。
「ここに来るのは初めてですか?」
物珍しそうにキョロキョロしていたのが恥ずかしくなり、悠莉は頭をかいて笑った。
「お恥ずかしながら、この手のデートスポットには縁がなかったもので……」
「そうなんですか、意外だな。ここ、いつかデートに来れたらなって思ってたんです。何から行きます?」
「うーん……あたし絶叫系好きなんですけど、吉田さんは?」
デートうんぬんの部分は聞かなかったことにしてガイドマップを覗くが、吉田は気にした様子もない。
「俺も好きですよ。青木さん、音ゲーは得意?」
「あまり得意ではないです」
「そっか。ここ、アトラクションに音ゲーの要素もあるから、音ゲーが好きだと楽しみが二倍になるんだ」
一体どんなアトラクションだ。
想像がつかずに首を捻る悠莉を見て、吉田は実物を見せたほうが早いと判断した。
「よし、まずは一階のジェットコースターに行きましょう」
入ってすぐに見かけた螺旋状のレールを思い出し、悠莉は嬉々として吉田についていった。
たまの休日に、山梨にある絶叫ばかり集まった遊園地まで車を飛ばすくらい、悠莉は絶叫が好きである。
新規開発に胸を踊らせながら、20分待ちの行列の最後尾に並んだ。