COLOR




ふとスマホが震えた

名前を確認すると"秋月(あづき)"からの着信


「もしもし?」

「あ、お兄ちゃん?今大丈夫?」

「あぁ、今日は休みだ」

「えー、今日日曜だよ?来週の日曜日は大丈夫だよね?」

「あぁ、」

「本当に本当?」


何度も確認する妹に俺はどれだけ信用ないのかと笑えてくる
まぁ、二週連続で日曜日が休みなんて珍しいからな


「春ちゃん楽しみにしてるんだからね!」

「俺だって妹の一生に一度の晴れの舞台だからな
楽しみに決まってるだろ
半年前から休み取ってるよ」

「うん、そうだよね」

「土曜日の夜には着くように帰るから」

「うん!兄妹三人で外食ね!!お兄ちゃんの奢りだよ!
父さんたちも兄妹水入らずで楽しめって!」


ちゃっかりしてる妹に呆れながらも、さっきまでの刺々しさが抜けていく


「あぁ」

「春ちゃんと二人で待ってるね!」


そう言って通話は途切れた
相変わらず元気なやつ

ふと、人の流れに視線を移す
この、人の流れが途切れることはない

この流れのどこかにあいつは居るのだろうか


「冬華」


不意に溢れた名前に目頭が熱くなる


「はい?」


戸惑いながら返事をするその声を俺は忘れたことはない



そして、その声をずっと
探していた





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