白い君

第1章 〈始まり〉

桜が満開に咲き乱れ、通学路では真新しい制服を着た新入生や休み中何をしていたかの話題で盛り上がる在校生の楽しそうな会話が飛びかっていた。
そんな楽しそうな新学期を迎える人達の中、親の事情により、高校3年生から転校することになった加奈実は1人で登校していてとても気持ちが沈んでいた。



加奈実「…家に帰りたい。高校3年生で転校とか本当ありえない。一から友達作るとか無理でしょ…はぁ…早く卒業したい。」(心の声)



加奈実は、学校に到着すると下駄箱の近くに貼り出されていた学年別クラス表から自分の名前を確認して、周りの盛り上がる騒がしい声から逃げるように、3年生にしては真新しい上履きに履き替え自分のクラスである教室に向かった。


教室に到着し、加奈実は後ろのドアから誰にも気づかれないように入ったつもりだったが、入った瞬間教室内が一瞬静まりその後あちらこちらざわざわと自分を見ながら話し始めた。
その空気がいたたまれなく黒板に書かれた座席表に自分の名前を見つけ席に着き加奈実は本当に家に帰れば良かったと後悔した。


座ってしばらく俯いていると隣から明るい優しい声が聞こえた。


?「はじめまして!転校生だよね?」


加奈実は声をかけた人が誰なのかが気になりゆっくり隣に振り向いた。
声をかけてきたのは髪を軽く巻いてポニーテールをしている背の高い女の子だった。
綺麗な二重でパッチリとした瞳でまっすぐ私を見ていた。


加奈実「そうなんだ。親の事情で引っ越してきたの。私、加藤加奈実です。よろしくね」


夏菜「そっかぁ、大変だね。あっ私、石田夏菜こちらこそよろしくね!加奈実ちゃん教室入る時気まずかったでしょ。みんな転校生なんて中々来ないから物珍しくて話してんだよ」


加奈実「転校生が物珍しいのは分かるけど空気感が気まずすぎるよ」


夏菜「気にしないで大丈夫だよ」


加奈実「うん!ありがとう夏菜ちゃん改めてよろしくね」


夏菜「こちらこそよろしくね!」



会話の最後ににこっと夏菜の笑った顔が子供の無邪気な笑顔みたいで加奈実は緊張が少しほぐれたのであった。


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