白い君

第4章〈遠い距離〉


体育館の場所が分からず一階を歩き回っていると後ろから加奈実と同じ背丈のバスケのユニフォームを着た髪が栗毛の物腰の柔らかそうな男の子声をかけてきた。


?「ねぇ君どうかしたの?何か探し物?」


加奈実「あっ私今日転校してきて、体育館の場所知らなくて…体育館の場所教えてもらえませんか?」


?「あぁ…ん?全体朝礼で体育館行かなかったの?」


加奈実「あっ…朝は体調悪くて朝礼出てないの」


?「ふーんそうなんだ…あっ君もしかして拓人のお気に入りの加藤さん?」


加奈実「お気に入り?私は加藤だけど何で名前知ってるの?というか拓人って誰ですか?」


?「伊東拓人。同じクラスの親友。もしかして拓人の話からして拓人と一緒にさぼってた子かなーって思って。君のこと傷つけたかもしれないって女の子関係であいつ珍しくへこんでたからさ。あっ体育館の場所。教えてあげるよ。今体育館戻ろうとしてたとこだったし」


加奈実「ありがとう。えっと…名前は?」


有沢「有沢優。同じ三年。君は?」


加奈実「加藤加奈実。何で学年分かったの?」


有沢「上履きの色でわかるから」


加奈実「あぁそっか。…あの友達から聞いたんだけど…その…伊東くんのファンクラブって人気なの?」


有沢「人気だねー。あの綺麗な顔だと女子はほっとかないよね。拓人のファンクラブ仕切ってる女子怖いらしいから拓人事好きなら加藤さん気をつけた方がいいよー」


加奈実「誰も好きっていってないよ!」


有沢「そんな食い気味にならなくても。拓人の事聞いてるから好きなのかと思ったのになー」


終始有沢の話のペースにのせらっぱなしの加奈実だったが体育館に着くまで加奈実の歩くペースに合わせてあるいてくれる優しさを感じ加奈実は有沢は良い人だと思った。


体育館の中ではボールと靴のなる音そして掛け声が飛び交っていた。
有沢と別れた加奈実は体育館の扉近くで練習風景を眺めていると伊東の姿はすぐに見つけた。
先程会った伊東打って変わって汗を流し次々と得点を決める姿に釘付けになった。

凄い…かっこいいって思う気持ちを伊東のファンクラブの黄色い声援に遮られてしまった。
ファンクラブのほうをみるとツインテールの気の強そうなファンクラブを仕切っている女子らしき子がこちらをみて眉をひそめていた。


加奈実はまだ見ていていたかったがファンクラブの圧倒的な熱量に自分が場違いだと思いと同時に伊東の存在をとても遠く感じいたたまれない気持ちでいっぱいになり体育館を出てた。


帰り道、いたたれない気持ちで複雑だったがふと有沢との話の中でお気に入りの言葉を思い出した。
加奈実は手鏡を取り出し首筋ついたキスマークをなぞった。


加奈実(もしかして…伊東くんのお気に入りのしるし…?)(心の声)


自分がお気に入りであるかもしれない期待を抱き加奈実は明日も伊東に会える事を楽しみにしていた。
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