白い君
第5章〈心のズレ〉
次の日、雨がしとしとと静かに降る中お気に入りの花柄の傘を回しながら加奈実は昨日とは打って変わり弾むように登校していた。
学校に到着し、お気に入りの傘を傘立てに置き、下駄箱で靴を履き替えようとすると加奈実の後ろからトゲのある強い口調で名前を呼ばれ、振り返ると昨日体育館で見たファンクラブを仕切ってる女の子だった。
その女の子は間近で見るとツインテールが似合うアイドル並み可愛いさである事となぜ自分の名前を知ってるのか驚き加奈実は目を丸くした。
?「ねぇあんた昨日体育館いたよね?ずーっと拓人事見ててさぁ目障りなんだよね。拓人の事好きなの?」
加奈実「誰か知らないけど。あなたに関係なくない?」
?「はぁ?……はぁもういい」
加奈実の事をジロリと睨み、ツインテールの女の子は機嫌が悪そうに立ち去ってしまった。
なんなんだろうとあっけにとられていたら隣の下駄箱でらゲラゲラ笑う声が聞こえてた。
有沢「お前面白いなー(笑)加藤さんさぁ。さっき話してた女の子。あいつ拓人のファンクラブ仕切ってる原田美久だよ。気をつけた方がいいって言ったのに(笑)宣戦布告したねー(笑)」
加奈実「おはよう有沢くん。昨日体育館で睨まれてたからファンクラブ仕切ってる女の子じゃないか薄々思ったけど…やっぱりそうなんだ!…でも宣戦布告に後悔はないよ。伊東くん好きな気持ちはあの子には関係ない事だもん」
有沢「ふーん…それにしても、後悔ない割には涙目なってますけど?(笑)」
加奈実「だって〜圧が〜怖かったんだもん〜(泣)」
有沢「ははっ(笑)まぁなんかあれば俺に言えよ」
加奈実「ありがとう有沢くん」
有沢「いーえー。…おーきたきた。ようやくお出ましだ(笑)拓人ーはよー今日もテンション低いなー」
伊東「あぁおはよ。お前がテンション高いんだよ。
……予鈴鳴る…行くぞ」
有沢「…あぁ。じゃあね加藤さん」
加奈実「うんっ…じゃあね」
伊東の姿を見て加奈実は飛び跳ねるぐらい嬉しくなったが伊東本人は全く加奈実の事を見ずに有沢と教室に行ってしまった。
昨日はキスマークまで付けられたのに今日は目も合わせず挨拶もしてくれない冷たい態度をとられ崖に落とされるような絶望感を感じた。
その後加奈実は、授業中ずっと伊東の冷たい態度についてぐるぐる考え続けた。
考えてついた結果、自分は伊東くんのお気に入りは勘違いであって伊東くんはもう自分に会いたくないのかもしれない。
昨日のことは忘れられないがこれ以上自分のことを避けられ傷つくなら無かったことにしようという考えに至った。
そんな事を考えていたらあっという間に放課後を迎えた。
友達となった夏菜は放課後のチャイムとともに帰ってしまったので加奈実も帰ろうとトボトボと下駄箱に向かい靴を履き替えた。
お気に入りの花柄の傘を持って帰ろうと傘置き場を見たら自分の傘が見つからず他のクラスに紛れてるのかもしれないと思い探したが見つからず加奈実は落胆した。
外を見ると朝にくらべて更に雨の勢いは強まりとても傘無しでは帰れない状況であった。
加奈実はしょうがなくまた靴を履き直し雨が止むまで教室で過ごす事にした。
教室に戻り、倒れるように机にうつ伏せになり今日一日女の子には睨まれ伊東くんには冷たい態度をとられ更にはお気に入りの傘までなくなり最悪だと絶望感いっぱいになった。
もういいや…しばらく寝よう。
そしたら気分が変わるはず。
雨が弱まったらさっさと家に帰ろう。
と思い加奈実は寝てしまった。
ピカッ!ゴロゴロゴローピカッ!ゴロゴロー⚡︎
轟音と雨の強まる音が聞こえ加奈実は目を覚ました。目を開けると隣の席で携帯をいじっているユニフォーム姿の伊東がいたた。
加奈実は伊東の姿に驚き飛び起きた。
加奈実「なっ!なんで伊東くんがいるの!?!?」
伊東「部活終わって忘れ物取りに教室行ったらお前のクラスの電気ついておかしいなって思って教室入ったらお前気持ちよさそうに寝てるから起こすの悪くて起きるまで待ってたんだよ」
加奈実「…そんなの…加奈実の事なんてほっといてくれてもいいのに…」
伊東「ほっとけねーだろ。外暗いのに女の子1人で帰らせられねーわ」
加奈実「…嘘…伊東くんは…加奈実事なんてどうでもいいくせに!」
伊東「はぁ?何言ってんのお前?」
加奈実「だって!…朝、加奈実いたのに目も合わせないしそのまま教室行っちゃうし!加奈実の事なんていないような扱いだったじゃん!」
伊東「それは!…昨日あんな事してお前の事傷ついたし、なんでもなさそうに朝有沢と喋ってたから…ほら立てよ帰るぞ!」
加奈実「…伊東くん…もしかして焼きもちやいて冷たい態度だったの?」
伊東「はぁ?はぁー。ほら、お前完全に目が覚めてんなら立てよ!」
加奈実「ねぇ〜焼きもち!(笑)あの伊東くんが焼きもちやいてたんだ(笑)」
伊東「まじでうるさい。もういい。置いて帰る」
伊東は立ち上がり教室を出て行こうとする。
加奈実「えっ!嘘!伊東くん待ってー!」
加奈実は教室を出て下駄箱で靴を履き替え顔を上げると下駄箱入り口で傘を差して伊東は加奈実を待っていた。加奈実は伊東のそんな優しさに触れ胸の鼓動が鳴り止まなかった。お気に入りの傘は無くなり雨で気分が落ち込んだが伊東と同じ傘に入れる事を思ったら加奈実は幸せな気持ちになった。