その時、オレンジジュースの香りがした。
お父さんやお母さんの方が、ずっと大切だったはずなのに。
私は、2枚目へ目を移した。何かをこぼしたような、黄色いシミが付いていた。
“ひどいこと言って、ごめんね。
『友達にならなきゃよかった』って私が言ったの、クラスメイトから聞いたよね。昨日は上手く小説が書けなくってむしゃくしゃしてた。
それは、夕香が離れていったからだよ。
さっき言ったように、私の小説の世界は全部夕香でできてたからだよ。
だから、書けなくなった。
虚しかった。それで勝手に自分に怒って、夕香に当たってしまった。
本当に、ごめん。
でも最後に渡した作品だけは、私の作品なんだよ?暗かったでしょ?
たくさんたくさん考えても、あんな話しか出てこなかったんだ。
あれは、中学生の時の実話だよ。友達に言われたんだ。
『私の心に住み着かないで』って。ショックで、忘れられなくて。
あの物語の結末とは違って、私は行動しないまま卒業した。
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