その時、オレンジジュースの香りがした。
まだ、別れたばかりだった。
これから始まるはずだった関係は、あるいは人生は、その日の暮れに呆気なく断ち切られた。
「夕香!!那央ちゃんが!」
母の声が鳴り響いた、午後9時48分。もう、遅かった。そして、早すぎた。
親友“だった”、那央が死んだ。
空っぽになった那央の身体を、厚い壁を挟んだ向こう側から眺めた。
不思議と、何も浮かばなかった。
2人で笑いあった日、喧嘩した日、そして仲直りした日。全て、フラッシュバックされてはとある言葉で消えてゆく。
『那央、あんたなんて友達じゃない。親友?ふざけないで』
その後に続いた、あの言葉。