女王陛下のお婿さま
01*女王陛下の憂鬱

 城の大広間で催されている舞踏会。その談笑の声や音楽の中に、チリンチリン、と二度ほどベルの音が聞こえた。すると、演奏していた楽師たちはピタリと音楽を止める。

 音が止まると、今までダンスをしていた貴族の紳士淑女たちも、何事かと動きを止めた。あとは様子を探るようなざわめきだけが聞こえていたが、それを遮るようにファンファーレが高らかに鳴り響く。

 ファンファーレが終わると、会場は静まり返っていた。いつの間にか皆は上座にある玉座へ期待の眼差しを向けている。その側にいたちょび髭の中年男性は、ごほんと咳払い。そして――――


「――――アルベルティーナ・フレイ・ハレルヤ七世女王陛下のお出ましでございます!」


 しんとした会場に、少し高いがよく通る男の声。その声を合図に玉座のまた奥の大扉が開かれ、美しいドレス姿の若い女性が現れた。

 会場中の誰よりも豪華で美しい青色のロングドレス。カラスの濡れ羽のような艶のある黒髪を上品に結い上げ、透き通った白い肌の胸元には、キラキラした宝石が輝いていた。

 皆に柔らかな笑顔を向けると、彼女はゆっくりと玉座に進む。その動きに合わせるように、貴族たちは次々に顔を伏せ頭を垂れた。
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