女王陛下のお婿さま
そして前に回ると、アルベルティーナの隣に腰かけた。
「――――僕はね、ずっと反対だったんですよ。いくら国が危機だとしても、ハレルヤと併合するなんて間違ってる、と」
ルイは手を伸ばすと、アルベルティーナの頭に乗っている小さな王冠に触れた。それは舞踏会で彼女が時々使用するレプリカだ。公式の祭典などの時は、もっと大きな本物を被るのだが。
レプリカと分かっていても、ルイはそれを愛おしそうに指先で撫でる。
「……でも、父上は僕の反対なんて聞き入れてくれなかった。国民が一番大事だとね。でも僕は違う。僕は、ヘーメル王家を存続させたいんです。愚鈍な国民の為に、今の地位を無くすなんて我慢出来ない!」
「そんな……」
「初めは、貴方と結婚すればいいと思っていました」
ルイはアルベルティーナの頭から王冠を取ると、自分の頭に乗せ満足そうに微笑む。
「貴方と結婚して、適当に言いくるめて王位を譲って貰おうと思っていたんです」
だからルイは、今回の調印式に来たのだという。
言われてみれば……併合の調印式の前、何度もヘーメル国王とは会って話し合いをしていたが、それには一度もルイの姿を見ることは無かった。