女王陛下のお婿さま

 そして前に回ると、アルベルティーナの隣に腰かけた。


「――――僕はね、ずっと反対だったんですよ。いくら国が危機だとしても、ハレルヤと併合するなんて間違ってる、と」

 ルイは手を伸ばすと、アルベルティーナの頭に乗っている小さな王冠に触れた。それは舞踏会で彼女が時々使用するレプリカだ。公式の祭典などの時は、もっと大きな本物を被るのだが。

 レプリカと分かっていても、ルイはそれを愛おしそうに指先で撫でる。


「……でも、父上は僕の反対なんて聞き入れてくれなかった。国民が一番大事だとね。でも僕は違う。僕は、ヘーメル王家を存続させたいんです。愚鈍な国民の為に、今の地位を無くすなんて我慢出来ない!」

「そんな……」

「初めは、貴方と結婚すればいいと思っていました」


 ルイはアルベルティーナの頭から王冠を取ると、自分の頭に乗せ満足そうに微笑む。


「貴方と結婚して、適当に言いくるめて王位を譲って貰おうと思っていたんです」


 だからルイは、今回の調印式に来たのだという。

 言われてみれば……併合の調印式の前、何度もヘーメル国王とは会って話し合いをしていたが、それには一度もルイの姿を見ることは無かった。
< 100 / 154 >

この作品をシェア

pagetop