女王陛下のお婿さま
「ですが貴方にお会いして、そう簡単にはいかないと悟ったんです」
ルイの他に大国ナバルレテの王子ファビオの存在に、頑なに結婚を拒否する女王陛下。そんな二人を見て、彼は別の計画を実行する事にした。
「――――ところで女王陛下。蜂蜜酒はお気に召して頂けましたか?」
――――蜂蜜酒?
突然どうしてそんな事を聞くのだろう。アルベルティーナはその唐突で場違いな問いかけに首を傾げた。
「あれは特別な酒なんですよ。ご存知でしたか?」
「え……?」
ルイは頭に乗せていた王冠を手に取ると、クルクルと弄ぶ。そして手を止めると、にやりと笑いながらそれを床へ放り投げた。
床に落ちた王冠はカランと冷たい金属音をたて、そのまま大理石の床を滑り部屋の隅へ行ってしまった。
「あの蜂蜜酒には、貴方を殺す毒が入っていたのですよ……」
ルイの衝撃的な告白に、アルベルティーナは息を飲む。そして全てに合点がいった。この動かない体の震えや痺れ、苦しさの全てに。
「……じゃあ、さっきの蜂蜜酒は…………」
「さきほどのだけではありません。貴方に差し上げた、全ての蜂蜜酒には毒を混ぜてあったのですよ」