女王陛下のお婿さま
あの夜……ルイとファビオの三人で夕食を取った時にルイが部屋から持ってきた蜂蜜酒。あれは、偶然持っていたわけではなかったのだ。
その夜の事を思い出し、アルベルティーナはハッとした。
「……まって、あの時、ファビオ王子も飲んだわ……!」
ルイの言っている事が本当なら、ファビオにも毒が……
「ああ、それは問題ありません。即効性の毒ではありませんし、貴方に差し上げたものは薄めてありましたから」
それは体内へ徐々に蓄積されてゆく毒だという。少量でも摂取し続ければ、早ければ二日ほどで今のアルベルティーナのように、体の自由がきかなくなる……
「でも、不思議なんですよ。僕が蜂蜜酒を差し上げてから、貴方は毎晩それを飲んでいたと聞いていますが……どうして毒は効かなかったのでしょう?」
確かに……ルイから蜂蜜酒を貰ったのは、もう五日以上も前だ。そして毎晩寝る前には飲んでいた。それなのに何故なにも起こらなかったのだろう? それはアルベルティーナにも分からなかった。
「仕方が無いので今夜の蜂蜜酒には、特別にたっぷりと入れさせてもらいましたが」
それがマイラの持ってきた蜂蜜酒……
濃度が高いその蜂蜜酒が引き金となり、今までアルベルティーナの体内に蓄積されていた毒が動き始めてしまったのだ。