女王陛下のお婿さま
ファビオは視線を隣の部屋へ続く扉へ向けた。その中には、アルベルティーナとルイがいる。
無理にでも部屋に残らなかった事を、彼は後悔していた。ルイの嫌味に短気を起こしてしまった自分に腹が立つ。
アルベルティーナを、守ってやりたかった。
女王として毅然と振る舞う反面、自分の事には自信が無いような素振りを見せる。自分の恋心には、まるで自信が無いように……
特定の人物の話をする時にだけ、彼女の瞳は揺れる。それが何なのか、ファビオはとっくに気が付いていた。
(……まったく、不器用だな)
ファビオは、それが彼女たちの事なのか自分の事なのか分からず、思わず笑ってしまった。
「――――何をニヤニヤしてるんだ」
ファビオに剣を突き付けていた兵士が、彼の表情の変化をめざとく見つけた。
「……別に。ニヤついていたつもりは無かったんだがな」
ファビオはさっと表情を戻しそむけたが、兵士はいぶかしげに顔を覗き込んだ。様子を探るように暫く見ていたが、やがて今度は兵士がニヤリと笑う。
「まあ、いい。軍事大国ナバルレテの王子だと偉ぶっているのも今のうちだ。時期にルイ王子から指示が出る。そうしたら、一番最初に貴様を殺してやるよ」