女王陛下のお婿さま

 どうやら兵士は、ファビオもナバルレテ国も気に入らないようだ。挑発するように剣をちらつかせた。


「そんななまくらな剣で、出来るのか?」

「うるせえ! 今すぐ試してやってもいいんだぜ!」


 今度はファビオの挑発に兵士は憤り、手にしていた剣を振り上げた。振り上げられた剣に怯え、誰かがキャー、と悲鳴を上げる。

 その時――――ドオン、という地響きのような大きな音が大広間に響いた。

 音の方向へ目をやると、そこは閉鎖されていた大広間の出入り口。扉が破壊され、ハレルヤ王国の兵士ではない、見慣れない鎧を着た者たちが十数名なだれ込んで来ている。

 叫ぶ人々、戸惑う兵士たち。

 混乱の中、鎧の者たちは素早く剣を抜くと、クリストフやエメリナ、ファビオへ剣を向けていたルイの兵士たちに切りかかる。剣が剣を弾く金属音が数回聞こえ、あっという間にルイの兵士たちを倒してしまった。

 全ては一瞬の出来事だった。ルイの兵士ほぼ全員が鎧の者たちに倒され、残った数名は力の差に呆然と立ち尽くす。

 そして、全ての騒ぎが収まると、また男が二人大広間へ入って来た。一人はローブに身を包み、それのフードを目深に被っていて顔は見えない。しかし一人は、ファビオも見慣れた顔だった。
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