女王陛下のお婿さま


「――――クラウス!」


 男の顔を見て、ファビオが驚いて声を上げた。そう、一人はクラウスだ。

 しかし、彼が連れて来たであろう鎧の兵士たちは、ファビオの兵士ではなかった。それにクリストフやエメリナの驚きように、どうやらハレルヤ王国の兵士でもなさそうだ。

 では、一体何処の……?

 クラウスはファビオと視線を合わせたが、すぐにそれをルイの兵士たちへ向けた。


「――――城の周囲は既にハレルヤ王国軍が包囲しています! 武器を捨て、大人しく投降してください!」


 クラウスはルイの兵士たちに降伏を促した。だが、それは逆効果だったようだ。一時は鎧の兵士たちによって消沈していたが、また剣を握り直しいきり立つ。


「我々にはまだ、ルイ王子がいる! 女王はまだ我らの手の内だ! 皆の者怯むな! 迎え撃て!」


 自分たちを奮い立たせるような雄叫びが上がる。鎧の兵士も武器を握り直し、クラウスも腰に携帯していた剣に手をかけた。

 アルベルティーナはまだルイによって隣の部屋へ捕らえられている。大広間が再び緊張に支配された。

 その瞬間――――ずっと隣にいたローブの男が、クラウスの肩に手を置いた。


「――――クラウス殿、私が参ります」

「ヨハン様……! 分かりました!」


 クラウスはヘーメル兵に向かって声を上げた。


「――――静まれ! ヘーメル兵は皆、武器を捨て跪け!」

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