女王陛下のお婿さま
クラウスの声に、ヨハンはゆっくりとローブのフードを脱いだ。その顔を見て、ルイの兵士たちは驚きどよめいた。そして次々に膝を着いてゆく。
それを見届け、ヨハンは声を張った。
「我はヘーメル国第二位王子、ヨハン・ラウ・ヘーメルである! 王の勅命を持ってここに来た! 我の声は王の声と聞け!」
――――ヨハンはルイと同じ、ヘーメル国の王子だったのだ。言われて見れば、ヨハンの巻き毛だが美しい金髪と青い瞳は、ルイと同じだ。
クラウスはナバルレテへは向かわず、ヘーメルへ行ったのだった。
ファビオの計画通り、最初はナバルレテへ向かっていたのだが、途中で考えを変えた。第三者を介入させるより、内輪で解決しようと思ったのだ。他の誰の声よりも、ヘーメル国王の言葉の方がルイには届くのではないかと。
しかしそれは少し遅かった。港の方から進路を陸側のヘーメルへ戻したので大回りになってしまい、舞踏会開催に遅れてしまい今に至る。
ヨハンは辺りを見渡すと、更に続けた。
「我が兄ルイの小隊よ、速やかに武器を捨て降伏せよ! 我が率いるのは王の精鋭部隊だ! もはや勝ち目は無い!」
ヨハンの隣にいた鎧の兵士が、剣を構えた。すると他の者たちも次々とそれに倣う。事前の戦闘で圧倒的な力の差を感じていたルイの兵士たちはがっくりとうなだれ、膝を着いたまま武器から手を離していった。