女王陛下のお婿さま


「……貴方に、国は治められないわ……!」


 そんな二人に割って入り、荒い呼吸をしながらそう言ったのは、アルベルティーナだった。毒で苦しそうだが、力を振り絞り半身を起こす。


「……国は人……その国民をないがしろにして、守れないような王には、誰も付いては来ない……!」

「うるさい! 黙れ!」


 アルベルティーナの言葉にカッとなり、ルイは剣を彼女にグイと近づけた。それを制すように、今度はヨハンが。


「お止めください兄上! 女王陛下を亡きものにしても、兄上は国王にはなれません!」

「……どういう事だ」

「父上は――――ヘーメル国王は今回、全権限を私に与えてくれました。ですから、私が決めます! 兄上の王位継承の地位を剥奪すると……!」

「剥奪だと?! 僕は第一位王子だぞ!」


 憤るルイに、ヨハンはゆっくりと首を振った。


「貴方はもう、何者でもありません」


 カラン、と乾いた金属音が響いた。それは、ルイの手から滑り落ちた、彼の剣が大理石の床に落ちた音。

 やがて彼の口から天を切り裂くような叫び声が。そのまま崩れるように膝を付き、頭を抱えうずくまってしまった。


「……僕は、王だ…………僕が……王になるんだ……」


 うずくまる彼からこぼれ聞こえるのは、もはや正気を失ったそんな呟きだけだった……
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