女王陛下のお婿さま
「――――アルベルティーナ!」
ルイが動けなくなると、クラウスは彼女に走り寄った。アルベルティーナは長椅子に突っ伏し、冷や汗をかきながらどんどん呼吸が荒くなっていた。
抱き上げ体を仰向けにしたが、アルベルティーナの瞳は閉じられ意識も混沌とし始めているようだった。
「しっかりしろ! ティナ! 何をされたんだ……!」
必死に呼びかけるが、もう彼女は返事すら出来なかった。
「――――毒を盛られたんだ」
クラウスのすぐ後ろに立ったファビオは、そういいながら懐から小さな包みを取り出した。絹の布で包まれたそれは、あの蜂蜜酒のつまみにといつかアルベルティーナに渡していた、砂糖菓子。
ファビオはそれを手に、クラウスと入れ替わる。ファビオはアルベルティーナを抱きかかえると、砂糖菓子をその口へ含ませた。
「ファビオ王子、それは……?」
「黙って見てろ。じきに良くなる」
砂糖菓子は口の中の熱と唾液で溶けだし、喉の奥へと流れ込む。ゆっくりとそれが体内へ吸収されてゆくと、アルベルティーナの呼吸が少し楽になったようだった。