女王陛下のお婿さま


「な……! 急に何を言い出すの、お父様!」


 アルベルティーナは父をたしなめたが、どうもクリストフは本気のようだ。ニコニコと二人を交互に眺めている。ヨハンは――――


「――――大変光栄に思います、ありがとうございます」

「ええ?! ヨハン王子?!」


 慌てるアルベルティーナに、ヨハンは笑顔を向けた。兄以上に美しい、金髪碧眼の天使のような笑顔で。


「……しかし残念なから私には、将来を誓い合ったフィアンセがおります。私の帰りを待っていてくれる姫を、裏切る事はできません」


 どこまでも誠実なヨハン王子に、アルベルティーナはホッとして胸を撫で下ろす。一人、クリストフだけがしょんぼりと残念そうだった。


 ヨハンが早々に国へ帰る為に部屋を後にすると、次に見舞いに訪れたのはファビオだった。

 彼もまた、アルベルティーナが目覚めるのを待っていたのだ。クリストフは余程娘が心配なのだろう。ベッドの側から動こうとはしなかった。

 ヨハンとは対照的に、ファビオはベッドの横の椅子に勧める前にどっかりと座った。


「――――お加減はいかがですか? アルベルティーナ女王陛下」


 少しふざけた感じでファビオはそう言った。いつもの彼だ。
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