女王陛下のお婿さま

 大変な事があったのに変わらない……そんなファビオにアルベルティーナは安堵する。


「お気遣いありがとうございます、ファビオ王子。私の毒を消して下さったのも、騒動を察して動いて下さったのも貴方だと聞いています。本当にありがとうございました」

「父親として私からも礼を言わせてくれ。ありがとう、ファビオ王子」

「いや……無事で良かった」


 珍しく素直にアルベルティーナが礼を言ったからだろうか、それともその父親にまで言われたからだろうか。ファビオは少し照れ臭そうに笑った。


「でも、どうして私が毒を盛られたとすぐに分かったのですか?」

「ああ、それは――――」


 ――――異母兄弟の多いファビオの王家では、昔から争いが絶えなかった。時には暗殺が企てられるほど。

 だからファビオは、幼い頃から毒に体を慣れさせる訓練をさせられていたのだ。それは、ごく少量の様々な毒を体内に入れ、抗体を作るという。


「――――だからあの夜、ルイの奴の蜂蜜酒を飲んだ時、すぐに分かったんだ。あの酒は、毒の味がした……」


 そしてファビオは、旅の荷物に入れていた、毒の中和薬が入った砂糖菓子をアルベルティーナへ渡した。ごく自然に、ルイにも疑われないように。

 砂糖菓子はとても上手く作用してくれた。だからアルベルティーナは舞踏会まで、体調を崩す事は無かった。
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