女王陛下のお婿さま

「そうですか、あの砂糖菓子は薬、だったのですね」

「ああ……ちゃんと説明しとけばよかったんだが、あの時はまだ、ルイの奴の企みもハッキリしていなかったから……」


　表立って動いて、万が一ルイが直接アルベルティーナに手を掛けてきたら危険だ、そうファビオは思ったのだ。


「そうだ！　ティナ、お前の命の恩人のこのファビオ王子が適任ではないかい？」

「適任……？　何に、適任なのですか、お父様」

「お前の婿にだよ、ティナ」

「えええ？！」


　クリストフはにこにことしながら、またそんな事を口走った。どうやら彼は、ここで本気でアルベルティーナの相手を決めたいようだ。


「――――お父様、そんな事急に言っては、ファビオ王子にご迷惑でしょう！」


　ヨハンの次はファビオに。アルベルティーナは少しうんざりしながら、クリストフを強い口調でたしなめた。しかし――――


「――――俺なら大歓迎だ」


　ファビオはそう言いながら立ち上がり、両手を広げた。そらはまるで、その腕の中にアルベルティーナが飛び込んで来いというふうに。


「もともとそのつもりでこの城に滞在していたんだからな」

「おお！　そうかそうか！　なら、決まりだな、ティナ！」


　やっと自分の望みが叶えられ、クリストフも嬉しそうに立ち上がった。そのままファビオの腕の中に飛び込んでしまいそうだ。