女王陛下のお婿さま
10*女王陛下のお婿さま

 今日の城の大広間は、舞踏会の時とは違う華やかさと賑やかさに包まれていた。それは大広間に留まらず、城中が白い花で飾り付けられ、城にいる者は侍女から門番まで皆にこにこと笑顔が絶えない。

 お昼を過ぎる頃には近隣諸国の招待客も来訪し、大広間は大勢の人で溢れていた。

 そんな中、チリンチリンというベルの音。会場を和やかにするように音楽を奏でていた楽師たちは、その音に気付き演奏を止める。そして一人の金管楽師が高らかにファンファーレを吹き鳴らした。

 ファンファーレが終わると、大広間の奥の大扉の脇に控えていたニコライが、いつものようにゴホンと咳払いを一つ。


「――――アルベルティーナ・フレイ・ハレルヤ七世女王陛下のお出ましでございます!」


 ニコライの声と共に開かれた扉。そしてそこには、純白のドレスを着たアルベルティーナが立っていた。

 ニコライはその姿を確認すると、また声を張った。


「――――クラウス・パレン侯爵閣下のお出ましでございます!」


 アルベルティーナの隣に立ったクラウスも、真っ白な式服姿。クラウスとアルベルティーナは見つめ合うと、にこりと微笑み合った。


 そう、今日は二人の婚約式だったのだ。


 結婚式はまだずっと先だが、クラウスと結婚する事を皆に御披露目する式だ。
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