女王陛下のお婿さま
婚約式が終わり、その後招待客たちとの食事会も滞りなく終了。夜に開催される祝賀舞踏会まで、まだ少し時間がある。大広間で歓談する客たちの喧騒を抜け出し、アルベルティーナとクラウスは城の東の棟へ向かっていた。
目的の場所は、アルベルティーナの私室だ。今日は朝から準備に忙しく、少し静かに二人で休みたかったのだ。
しかし私室へ繋がる長い階段に人影が見えて、二人は足を止めた。
「――――主役の二人が会場を抜け出して、何処へ行くんだ?」
そこにいたのは、ファビオだった。婚約式にも食事会にも参列し、大広間でアルベルティーナの両親と楽しそうに飲んで食べて、笑っていたと思ったのに……いつの間に抜け出してきたのだろう。神出鬼没のファビオに、二人は不思議でならなかった。
「ファビオ王子はどうしてここへ?」
アルベルティーナがそう問いかけると、ファビオはニヤリと笑った。
「二人に、ちゃんと祝いの言葉を伝えて無かったと思ってな……婚約、おめでとう……!」
「ありがとうございます! これも、ファビオ王子のお陰です……本当にありがとうございました」
アルベルティーナも礼を言って頭を下げた。クラウスは少し照れながら微笑み、ファビオに手を差し出す。
「本当に、なんとお礼を言ったらいいか……貴方のお陰です。ありがとうございました……!」
差し出されたクラウスの手を、ファビオはグッと強く握った。