女王陛下のお婿さま

 そしてベッドから降りると、あの時と同じように窓へ。窓の外はやはり同じように空が白み始めていた。


「――――ねえ、クラウス。あの時の約束も、覚えてる?」


 クラウスも立ち上がったが、あの時のようにアルベルティーナの隣には来なかった。その場に立ち尽くしたまま。


「ああ……覚えてる…………」


 ――――約束を、覚えていてくれた……!


 あんな子供の頃の約束なんて、もうとっくに忘れてしまっていると思っていた。アルベルティーナは嬉しくて、くるりと体を彼に向けたが、そこに立っていたのは暗い表情の彼だった。

 アルベルティーナにとっては懐かしくて嬉しい事なのに、どうしてクラウスはそんな顔をしているのだろう。それが分からなかった。


「あの頃と何も変わってない……私は今でもクラウスを守るよ」


 アルベルティーナがそう言うと、クラウスはふいと彼女から視線を反らしてしまった。


「……あの頃とは違う。お前が守るのは、この国の国民だ……お前は『女王陛下』なんだから」


 あの頃とは、違う……


 それはまるで、クラウスの心もあの頃と変わってしまった、そう言われたような気がした。
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