女王陛下のお婿さま


「どうしてそんな事を言うの? 王位を継いでも、私は変わってないよ。もちろん女王として国民は守る。でも……」


 でも……

 アルベルティーナはその先の言葉を言おうとしたが、自分と全く目を合わせてくれないクラウスを見て、言うのを止めた。その先は、言ってはいけないようなそんな気がしてしまったのだ。


「……ねえ、クラウス。湖に落ちた私を助けてくれたのは、クラウスだよね……?」


 水の中で聞こえた『ティナ』と呼ぶ声。あれは、クラウスだったのだと信じたい……


 『私はクラウスを守る』

 『俺は、ティナを守る』


 子供の頃に交わした約束。それはまだ、大切なものなのだと確かめたかった。

 今は女王とそれに仕える侍従と、状況は変わってしまったけれど……昔と何も変わらない幼馴染みとして、交わした約束は続いているのだと。

 しかし――――


「――――違う。助けたのは、ファビオ王子だ」


 朝を告げる、ヒバリの鳴く声が聞こえた。

 子供の頃に聞いたヒバリの声は、明るい朝を告げる楽しげな声だったのに。今聞こえた鳴き声は、何故か泣いているようにアルベルティーナには感じる。


「……もう、朝だな。お前が起きたって、マイラに伝えてくる……」


 クラウスは結局部屋を出る最後まで、アルベルティーナと目を合わせる事は無かった。
















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