女王陛下のお婿さま


「じゃあ、尚更だ。うまいぜ、これも」


 ファビオは彼女の手から一つ取って、自分の口に放り込んだ。アルベルティーナも同じように一つ、口の中へ。

 砂糖菓子は口の中でほろりと崩れると、柔らかい甘さが広がった。しかしそれは甘過ぎず、すぐにさらさらと消えてゆく。後に残ったのは、ほんのりとした苦み。そのほろ苦さが濃厚な甘さの蜂蜜酒とよく合いそうだった。


「見た目より甘くなくて、美味しいですね」

「だろ? これが酒によく合う」


 砂糖菓子を美味しいと誉めると、ファビオは嬉しそうに笑った。その顔が子供みたいで、思わずアルベルティーナも微笑んでしまう。

 四つも年上なのに、ファビオの屈託の無い笑顔に時々キュンとさせられる。

 アルベルティーナはもう一つ、砂糖菓子を口に入れた。やはり、ほろ苦さが舌に残る。


「……あの、ファビオ王子」

「ん、何だ?」

「クラウスは、元気ですか……?」


 クラウスはいまだファビオの侍従をしていた。だが、普段は王子に付き従っているのに、ここ数日は姿を見せていない。

 これだけ広い城内だ。別行動をしていれば何日も会わない事はよくある。だからそんなに心配するような事ではないのは、アルベルティーナも分かってはいるが。
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