女王陛下のお婿さま
06*痛みを伴う舞踏会
今夜の舞踏会は、準備の段階からいつもと少し違った。
いつもだったら、花や装飾品の飾り付けは大広間だけで済ます。しかし今回は、城の門からずっと深紅の絨毯が敷かれ、大広間までの通路には、アンティークの燭台や花が飾付けられた。
会場の大広間はもっと華やかに飾られ、高い天井のシャンデリアまでピカピカに磨きあげられている。
ハレルヤ王国にとって重要な隣国ナバルレテと、間もなく併合するヘーメルの王子二人の参加する舞踏会だ。取り仕切る補佐役のニコライの張り切りようも特別なものだった。
アルベルティーナもその『特別な舞踏会』の例外ではなく、その日の公務は全て休みになり、張り切るニコライの指示で夜に向けての準備をさせられていた。
朝から湯殿に放り込まれ、マイラ率いる侍女たちに肌や髪を入念に磨き上げられ。舞踏会で着るドレスを何着も試着させらるしまつ。
やっとドレスが決まった頃には、アルベルティーナはへとへとになってしまっていた。
二人の王子も準備に忙しいのだろう。今日ばかりはアルベルティーナに付き纏っては来なかった。それどころか、どちらも姿を見かけない程。
一度だけ、湯殿からの帰りに湯浴みへ向かうファビオとすれ違ったが、挨拶を交わしただけで話はしなかった。