女王陛下のお婿さま
……そしてそこに、クラウスの姿は無かった。
きっとまだ、使いから戻って来ていないのだろう。ファビオは何も言わなかったが、アルベルティーナはそう理解した。
クラウスと……もう一度ちゃんと話をしたかった。
今日の舞踏会で本当に、ファビオかルイと婚約する事を決めるわけじゃないが。きっと父のクリストフはそれを期待している。クリストフだけではない。二人の王子も、舞踏会に来る人々みんなもそうなのだろう。
だからこそ、もう一度クラウスと話したかった。
彼の気持ちが知りたかった……
午後になると、まだ早い時間から招待客たちが続々と城へ集まり始めた。城の上階の窓からアルベルティーナはその人混みを眺めていたが、クラウスの姿を見つける事は出来なかった。
やがて山の向こうに陽が隠れ夜の帳(とばり)が下りると、城の高台の鐘が鳴り、舞踏会の開催を告げた。
普段だったら、アルベルティーナが舞踏会に参加する時は、宴の中盤で会場へ入る事にしている。あまり最初から参加すると、他の来賓が気を使ってしまい、楽しめないだろうという配慮からだった。
しかし今回は一番最初に会場へ入り、訪れる人々を迎えた。今夜は歓迎の舞踏会で、主役は二人の王子なのだから。