女王陛下のお婿さま
そしていつもと違う特別さは、もう一つ。
国王を退位してからは、舞踏会などのパーティーには決して参加しなかった、父クリストフと母エメリナが参加しているのだ。会場入りした人々は、玉座の前に立っているアルベルティーナの隣に二人がいる事に驚き、歓喜の声を上げていた。
大広間に来賓があらかた揃うと、高らかにファンファーレが鳴り響いた。玉座の後ろにある大扉が開かれると、そこに一人の王子の姿が。
「――――ナバルレテ国第九位王子、ファビオ・ナバルレテ様のお出ましでございます!」
扉の端に控えていたニコライが、ファンファーレに負けない高らかな声を上げる。同時に、会場の女性たちがキャア! というはしたない歓声で沸いた。
正装に身を包んだファビオは、いつも城をウロウロしているだらしない風体とは違い、ちゃんと美男な王子様になっていたのだから。
彼の褐色の肌に映える真っ白な絹で出来た、丈の長いゆったりとした上着と、同じ素材のゆったりとしたズボン。それには金色の糸で刺繍が施されている。肩に掛けられているのは、共布で出来たマントのような大きな長いスカーフ。それにも素晴らしい金刺繍が。
特徴的なファビオの紅蓮の髪には、やはり白い絹のターバンが巻かれ、その色を際立たせていた。
何処から見ても美しく逞しい、南国の王子様だ。