女王陛下のお婿さま

 解放されていた大広間の扉が、大きな音をたてて閉められた。突然起きた異変に音楽は止み、舞踏会に来ていた人々がざわめき始める。

 その騒ぎを切り裂く野太い声が響いた。


「――――静まれ! 我らはヘーメル国ルイ王子付き小隊である! この会場は我らが制圧した! 逆らう者は切り捨てる!!」


 声を合図に、広間に分散していた数人の男たちがそれぞれに腰の剣を抜いた。正装用の飾太刀(かざりたち)だと思われていたそれは、真剣だったのだ。

 そのギラリとした輝きを目にした人々から、また悲鳴が上がる。

 アルベルティーナやその両親を護衛する兵士たちは、舞踏会という事で皆広間へは入っておらず、扉の外で警備をしていた。その入り口を閉められてしまい、為す術がない。

 中にいる男女は舞踏会用に着飾った、丸腰の者ばかりだった。

 何人かの兵士が素早く動き、クリストフとエメリナ、ファビオの喉元に剣を突きつけた。それでもう、誰も動く事は出来なくなってしまった。


「……お前たちの目的は何だ」


 喉元の剣を煩わしそうに睨み付けながら、クリストフの隣に立っていたファビオが言った。答えたのは、最初に声を上げた男。
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