sachi
「あーあー好きよー」
今日はかなたとカラオケに来た。
「お前、相変らずだな。」
「上手いだろ。」
「それで、いばれるお前すげーよ。」
「どういう意味よ!」
ムキになってる私を見てかなたが笑ってる。
好きだな。この笑い方。
かなたは歌が上手くて、小さい頃からよく歌を教えてもらってた。
今では一緒に歌う曲も増えて、遊ぶ時はだいたいカラオケに行く。
「あなたとー」
「キミとー」
「笑うことがどれほど幸せかー。」
かなたと目が合う。
かなたは気持ち良さそうに歌ってる。
ほんとに。
幸せだよ。かなたと笑えるって。
私にとっての本音の曲。
かなたにとっては本音なんだろうか。
本音だったら。
「ねえ!文化祭さ!カラオケ大会あるじゃん?」
「おう。」
「それ一緒にでようよ!」
「は?」
私はずっと前からかなたとカラオケ大会に出ることを密かに計画していた。
だって絶対楽しいし、楽しいし。
「いいじゃーん。」
「恥ずかしいよ、ばか。」
そう言ってかなたが顔を赤らめる。
ほんとに、すぐ照れるんだから、ばか。
「ま、考えといて!」
かなたはうんともすんとも言わない。
これは、確実に出ないな。
「あ!もしも、私があとちょっとで死ぬんだとしたら、かなた一緒にカラオケ大会出る?」
「は?何言ってんの、お前。」
「例えばの話じゃーん。もし、私が一年後死ぬとしたら。」
そう言った時のかなたの顔は、今でも忘れない。
何かを察したように、私の腕を掴んだ。
かなたと目を合わせたくなかったけれど、逸らすことができなかった。
「嘘だよな。お前、死なないよな。」
かなたが真剣な顔をして、私を見つめる。
私はニッと笑ってみせる。
「死ぬわけないじゃーん!ばか。」
笑って言ったつもりだった。
冗談だよ。かなた。嘘だよ。かなた。
そう思わせるような顔をして言ったつもりだった。
でも、
かなたの目は変わらなかった。
笑ってくれなかった。
ただ私を見つめるだけだった。
そして悟ったようにこう言った。
「お前、死ぬんだな。もうすぐ。」
かなたには隠し事はいつもできなかった。
かなたのクッキーを盗んで食べた日。
勉強してないのに勉強したって言った日。
悲しいことがあって学校に行かなかった日。
太ってないふりした日。
かなたはいつも私の心を見透かしてきた。
そして今も。
そんなに綺麗な目で見られると、
ちょっと悲しくなってくるな。
こんなつもりじゃ、なかったんだけどな。
スーと涙が零れてきた。
ほんとはどこかで期待していたのかもしれない。
かなたに自分の気持ちを見透かされて、
寄り添ってもらうことを。
そうだ、期待していた。
かなたの目も少し潤んでいた。
クールなかなたが泣くなんて滅多にないぞ。
これは、写真とらなきゃな。
かなたは私をぎゅっと抱きしめた。
肩は震えていた。
私よりも震えていた。
かなたらしいな。
泣いた顔を見せないなんて、ツンデレだな。
私もかなたの肩の震えが移って、自然に震えてきて涙が止まらなくなった。
「かなた。」
かなたからの返事はなかった。
「私、がんになった。」
震える声で必死に伝える。
「骨のがんで、気づくのが遅くて、だから。」
「だから、あと。」
「あと、1年しか生きられないんだ。」
「あー。」
かなたが声を出して泣いていた。
こんなかなたは初めて見た。レアだぞ。
抱きしめられるなんて、
かなたに恋してる私からしたら、
反則なんだけどな。
心臓飛び出るくらい嬉しいけど、でも。
こんな悲しい抱きしめ方されるなんて、想像もしてなかったな。
かなたが私に顔を見せる。
「お前のやりたいこと全部やろう。」
「え?」
「俺はお前が好きだ。」
「え?」
「だから、お前の最後に居させてくれ。」
あのシャイなかなたがこんなこと言うなんて、これこそ反則だな。
こんな時に言わなくてもいいと思うけどな。
「私も好きだよ。ずっと。」
涙が止まらない。
かなたもひたすら泣いていた。
そのままキスをした。
この日は悲しい日だった。
でも、悲しいおかげで世界一幸せな日だった。
憧れのかなたが親友じゃなくて、恋人になった。
たった1つの記念日だった。
帰り道。
「かなたー目赤いよ。」
「うるせーばか。」
かなたは恥ずかしそうに目を擦っている。それをいじって私は笑う。
「かなたらしいなー。カラオケ店でキスとか。」
そう言ってかなたの方を見ると、かなたがめちゃくちゃ顔を赤くしていた。
「これからは、遠慮しないからな。」
「ん?」
「お前は俺のもんだから。」
全身がカッと熱くなる。こんなことをかなたの口から聞ける時が来るなんて。
「今の録音しておけばよかったー」
「ばかか、お前。」
そう言ってかなたが私の頭を叩いた。
私はかなたに怒る。
幸せだ。
悲しくなんてない。
楽しいじゃないか。ただ楽しい。
怖くなんてない。
何にも怖くなんてない。
今日はかなたとカラオケに来た。
「お前、相変らずだな。」
「上手いだろ。」
「それで、いばれるお前すげーよ。」
「どういう意味よ!」
ムキになってる私を見てかなたが笑ってる。
好きだな。この笑い方。
かなたは歌が上手くて、小さい頃からよく歌を教えてもらってた。
今では一緒に歌う曲も増えて、遊ぶ時はだいたいカラオケに行く。
「あなたとー」
「キミとー」
「笑うことがどれほど幸せかー。」
かなたと目が合う。
かなたは気持ち良さそうに歌ってる。
ほんとに。
幸せだよ。かなたと笑えるって。
私にとっての本音の曲。
かなたにとっては本音なんだろうか。
本音だったら。
「ねえ!文化祭さ!カラオケ大会あるじゃん?」
「おう。」
「それ一緒にでようよ!」
「は?」
私はずっと前からかなたとカラオケ大会に出ることを密かに計画していた。
だって絶対楽しいし、楽しいし。
「いいじゃーん。」
「恥ずかしいよ、ばか。」
そう言ってかなたが顔を赤らめる。
ほんとに、すぐ照れるんだから、ばか。
「ま、考えといて!」
かなたはうんともすんとも言わない。
これは、確実に出ないな。
「あ!もしも、私があとちょっとで死ぬんだとしたら、かなた一緒にカラオケ大会出る?」
「は?何言ってんの、お前。」
「例えばの話じゃーん。もし、私が一年後死ぬとしたら。」
そう言った時のかなたの顔は、今でも忘れない。
何かを察したように、私の腕を掴んだ。
かなたと目を合わせたくなかったけれど、逸らすことができなかった。
「嘘だよな。お前、死なないよな。」
かなたが真剣な顔をして、私を見つめる。
私はニッと笑ってみせる。
「死ぬわけないじゃーん!ばか。」
笑って言ったつもりだった。
冗談だよ。かなた。嘘だよ。かなた。
そう思わせるような顔をして言ったつもりだった。
でも、
かなたの目は変わらなかった。
笑ってくれなかった。
ただ私を見つめるだけだった。
そして悟ったようにこう言った。
「お前、死ぬんだな。もうすぐ。」
かなたには隠し事はいつもできなかった。
かなたのクッキーを盗んで食べた日。
勉強してないのに勉強したって言った日。
悲しいことがあって学校に行かなかった日。
太ってないふりした日。
かなたはいつも私の心を見透かしてきた。
そして今も。
そんなに綺麗な目で見られると、
ちょっと悲しくなってくるな。
こんなつもりじゃ、なかったんだけどな。
スーと涙が零れてきた。
ほんとはどこかで期待していたのかもしれない。
かなたに自分の気持ちを見透かされて、
寄り添ってもらうことを。
そうだ、期待していた。
かなたの目も少し潤んでいた。
クールなかなたが泣くなんて滅多にないぞ。
これは、写真とらなきゃな。
かなたは私をぎゅっと抱きしめた。
肩は震えていた。
私よりも震えていた。
かなたらしいな。
泣いた顔を見せないなんて、ツンデレだな。
私もかなたの肩の震えが移って、自然に震えてきて涙が止まらなくなった。
「かなた。」
かなたからの返事はなかった。
「私、がんになった。」
震える声で必死に伝える。
「骨のがんで、気づくのが遅くて、だから。」
「だから、あと。」
「あと、1年しか生きられないんだ。」
「あー。」
かなたが声を出して泣いていた。
こんなかなたは初めて見た。レアだぞ。
抱きしめられるなんて、
かなたに恋してる私からしたら、
反則なんだけどな。
心臓飛び出るくらい嬉しいけど、でも。
こんな悲しい抱きしめ方されるなんて、想像もしてなかったな。
かなたが私に顔を見せる。
「お前のやりたいこと全部やろう。」
「え?」
「俺はお前が好きだ。」
「え?」
「だから、お前の最後に居させてくれ。」
あのシャイなかなたがこんなこと言うなんて、これこそ反則だな。
こんな時に言わなくてもいいと思うけどな。
「私も好きだよ。ずっと。」
涙が止まらない。
かなたもひたすら泣いていた。
そのままキスをした。
この日は悲しい日だった。
でも、悲しいおかげで世界一幸せな日だった。
憧れのかなたが親友じゃなくて、恋人になった。
たった1つの記念日だった。
帰り道。
「かなたー目赤いよ。」
「うるせーばか。」
かなたは恥ずかしそうに目を擦っている。それをいじって私は笑う。
「かなたらしいなー。カラオケ店でキスとか。」
そう言ってかなたの方を見ると、かなたがめちゃくちゃ顔を赤くしていた。
「これからは、遠慮しないからな。」
「ん?」
「お前は俺のもんだから。」
全身がカッと熱くなる。こんなことをかなたの口から聞ける時が来るなんて。
「今の録音しておけばよかったー」
「ばかか、お前。」
そう言ってかなたが私の頭を叩いた。
私はかなたに怒る。
幸せだ。
悲しくなんてない。
楽しいじゃないか。ただ楽しい。
怖くなんてない。
何にも怖くなんてない。