sachi
1か月前。春休み。

朝、日課のrunningをしていると、
足に違和感を感じた。
何となく、動きずらくて骨が上手く動かないようなそんな気がした。
その日は、走り過ぎなのかと思って走る距離を短く
した。

次の日。

昨日の違和感は痛みに変わっていた。
歩くだけでも足に振動が加わったみたいにじりじりといたんだ。
捻挫でもしたのかなと思って、湿布を貼った。

次の日。

膝が真っ赤に腫れ上がっていた。
骨折した時のような痛みが足に広がっていて、立つことが精一杯だった。

すぐに病院に行ってレントゲンをとった。

医者は私とお母さんを見て、険しい表情で言った。

「なつめさんは、骨肉腫というガンです。」

そんなことを言われても、何も実感はわかなくて、ただ足の痛みだけがズキズキと私の体に突き刺さ
る。

お母さんも、私と同じようにポカンとした顔をしていた。信じるにも、信じられないというような顔で医者の顔をずっと見ていた。

骨肉腫。
希少がんの1つである。
主に、若者の骨に発症しやすい。

ドラマでしかこんな病名は聞いたことがなくて、知識も何もなかった。

「治るんですよね。」

先生がくれたパンフレットには5年生存率は70%と書いてあった。なんだ、大丈夫じゃないか。

でも先生は、笑ってくれなかった。
ただ

「治りません。治療は不可能です。」

そういうだけで、明るい言葉は何もかけてはくれなかった。

お母さんはその言葉を聞いた瞬間、ポロポロと涙を零した。
私は泣けなかった。
自覚しようと思ってもできなかった。

私の足のレントゲン写真。
膝のところがモヤモヤとしていて透けていた。
これが癌なのか。

「なつめさんの癌は広がりが大きく、血液に転移している状態です。もうここまで来てしまうと、何も出来ません。」

そんなこと言われても、何もわからないよ。

お母さんは目にハンカチをあててずっと泣いてい
る。

「先生?あと、どのぐらい生きられるの?」

私は明るい口調で尋ねた。
別に明るくしようとしてした訳では無い。
悲しいと思わなかったんだ。

「あと、1年ぐらいでしょうか。」

先生の言葉は、私の頭の中で何度も繰り返された。
あと1年。
あと1年。
あと、1年。
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