初恋 ~頑張る女子と俺様上司の攻防戦~
「すみません。分かってます。やめるつもりなんです。でも、ママにはずっとお世話になっていて、頼まれると断れなくて・・・」

「春樹が心配してたぞ。お前のデザインが上がってこなかったって」
「いや、できなかったわけでは無くて」
やめよう。
今ここで愚痴れば、チーフを飛び越えて社長に言いつけたことになってしまう。
「どうかしたのか?」
「いいえ。間に合わなかっただけです」
「そうか、まだ新人だし仕方ない。でも、同じ失敗を2度はするな」
「はい」
「バイトも、いい加減やめろ」
「はい」
「うちの仕事に影響するようなら、実力行使にでるからな」

実力行使って・・・

「うちは設計事務所だ。そのデザインを生み出すのはデザイナーで、それを形にするために多くの人間が働いている。お前は1人で図面を引いていると思っているかもしれないけれど、たくさんのサポートのお陰で、仕事ができているんだ。それを忘れるんじゃない」
「はい」
「それが分かっていれば副業なんてできないだろう」
なるほど、社長が言いたいのはそこかあ。

今度こそ、ママにはっきり言おう。
これ以上中途半端なまねはできないから。
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