神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
「どこへ行くのです?!・・・スターレットは!?」
がなるようにそんな事を言いながら、怖い顔をしたリーヤが、足元の砂を蹴散らすようにして丘を登ってくる。
実にうっとうしそうな表情をして、ジェスターは、ちらりとそんな彼女の顔を見た。
「スターレットなら、とっくの昔に此処を離れたよ」
「なんですって!?」
「頭に血が昇ったまま、ゼラキエルを追っかけてるあいつに、そう簡単に追いつけるかよ?あいつはロータスの大魔法使いだぞ?」
「ならば、どうしてそれを先に言わないのですか?!」
「言ってどうすんだよ?いずれは嫌でも会える」
馬の手綱を解きながら、悪びれもせずそう言ったジェスターに、リーヤは、ますます綺麗な眉を吊り上げて、殊更怖い顔つきで彼を睨みつけたのだった。
「これからどこに行こうと言うのですか!?」
「エトワーム・オリアだ」
軽い身のこなしで騎馬にまたがると、ジェスターは慣れた手つきで馬頭を巡らせた。
不満そうな顔つきをしながらも、リーヤもまた、ひらりと騎馬に飛び乗ると片手で手綱を操って馬頭を巡らせた。
「エトワーム・オリアに行けば、スターレットに会えるのですか!?」
「さぁな、運がよければ会えるんじゃねーのか?」
ジェスターは、なにやらひどく意地の悪い表情をしてそう言うと、そのまま馬腹を蹴ったのだった。
「あ!待ちなさい!ジェスター!!」
綺麗な顔を不満そうに歪めたまま、リーヤもまた、騎馬の馬腹を蹴ったのである。
二つの馬蹄が、天空に浮かぶ太陽の光が降り注ぐ、荒れ果てた大地に響き渡っていく。
疾風に揺れる見事な栗毛の下で、ジェスターは、その燃えるような緑玉の瞳を鋭利に細めると、片手で器用に騎馬の手綱を操りながら、片手で未だに熱い痛みが疼く左胸を押さえたのだった。
古のアーシェ一族が息づいた今は忘れ去られた街、アシェ・ギヴィシム。
いずれ、そう遠くない未来に、またこの忘却の街に戻ることになるのだろう・・・・
その時は、恐らく・・・・・・
天空高い太陽が、金色の光の矢を降らせる荒涼たる大地を、北西に進路を取る馬蹄の音が、ゆるやかに、砂に埋もれた古の街から遠ざかって行った。
がなるようにそんな事を言いながら、怖い顔をしたリーヤが、足元の砂を蹴散らすようにして丘を登ってくる。
実にうっとうしそうな表情をして、ジェスターは、ちらりとそんな彼女の顔を見た。
「スターレットなら、とっくの昔に此処を離れたよ」
「なんですって!?」
「頭に血が昇ったまま、ゼラキエルを追っかけてるあいつに、そう簡単に追いつけるかよ?あいつはロータスの大魔法使いだぞ?」
「ならば、どうしてそれを先に言わないのですか?!」
「言ってどうすんだよ?いずれは嫌でも会える」
馬の手綱を解きながら、悪びれもせずそう言ったジェスターに、リーヤは、ますます綺麗な眉を吊り上げて、殊更怖い顔つきで彼を睨みつけたのだった。
「これからどこに行こうと言うのですか!?」
「エトワーム・オリアだ」
軽い身のこなしで騎馬にまたがると、ジェスターは慣れた手つきで馬頭を巡らせた。
不満そうな顔つきをしながらも、リーヤもまた、ひらりと騎馬に飛び乗ると片手で手綱を操って馬頭を巡らせた。
「エトワーム・オリアに行けば、スターレットに会えるのですか!?」
「さぁな、運がよければ会えるんじゃねーのか?」
ジェスターは、なにやらひどく意地の悪い表情をしてそう言うと、そのまま馬腹を蹴ったのだった。
「あ!待ちなさい!ジェスター!!」
綺麗な顔を不満そうに歪めたまま、リーヤもまた、騎馬の馬腹を蹴ったのである。
二つの馬蹄が、天空に浮かぶ太陽の光が降り注ぐ、荒れ果てた大地に響き渡っていく。
疾風に揺れる見事な栗毛の下で、ジェスターは、その燃えるような緑玉の瞳を鋭利に細めると、片手で器用に騎馬の手綱を操りながら、片手で未だに熱い痛みが疼く左胸を押さえたのだった。
古のアーシェ一族が息づいた今は忘れ去られた街、アシェ・ギヴィシム。
いずれ、そう遠くない未来に、またこの忘却の街に戻ることになるのだろう・・・・
その時は、恐らく・・・・・・
天空高い太陽が、金色の光の矢を降らせる荒涼たる大地を、北西に進路を取る馬蹄の音が、ゆるやかに、砂に埋もれた古の街から遠ざかって行った。