神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
*
大リタ・メタリカ王国の王都、城塞都市リタ・メタリカ。
この広大な国を統治する王の居城は、にわかにざわめき立っていた。
ここ数日、宮廷付き魔法使いを派遣して欲しいとの文書を携えて、各地の地方巡査官から次々と使者が王宮に上って来ているのである。
それでなくても、突然、第一王女リーヤティアが居なくなったことで、王宮は大騒ぎであるのに、リタ・メタリカの各地では、あの魔王と呼ばれる魔法使いが放ったと思われる魔物達に次々と都が襲われて、数多くの死者が出ているというのだ・・・・
「ウィルタール!お前は今すぐ北のリンデルへ行け!このままでは、エトワーム・オリアも危ないぞ!あそこには【封印の塔】がある!急げ!!」
宮廷付き魔法使いの執務室がある離宮の回廊を、息せいて走っていた少年の背中に、先輩たる魔法使いの青年がそう声をかけてきた。
リンデルとは、王都の北方に聳(そび)えたつカルダタス山脈を越えた場所にある、大街道銀楼の道(エルッセル)の宿場町の名である。
明るい茶色の髪を弾ませて、その青い瞳で背後を振り返った見習魔法使いの少年は、幾分不安そうな顔をしながらも、強く頷いたのだった。
「はい!!」
その少年、ウィルタール・グレイの眼前で、先輩たる魔法使いの青年は、眩い光を纏いながら、一瞬にしてその場から姿を消し去った。
まだ見習いたる彼には、師であるロータスの大魔法使いスターレットや、先程の先輩たる魔法使いのように、瞬時に空間を移動できる力などない。
リタ・メタリカの宮廷付き魔法使い達は、その才能を王に認められた精鋭の集まりだ、まだまだ彼など、その足元にも及ばない。
ウィルタールは、どこか悔しそうに眉根を寄せると、離宮の一室に設置されている【切望の石(ウィシュ・ド・メイル)】に向かって疾走して行った。
魔法使いは、魔剣を操り主に攻撃を専門とする魔法剣士とは持っている質が違う。
空間を自由に行き来することが出来ないのは、魔法剣士とて同じであるが、魔法剣士ほどその力を確立できていない彼には、それ以前の問題であるのだった。
大リタ・メタリカ王国の王都、城塞都市リタ・メタリカ。
この広大な国を統治する王の居城は、にわかにざわめき立っていた。
ここ数日、宮廷付き魔法使いを派遣して欲しいとの文書を携えて、各地の地方巡査官から次々と使者が王宮に上って来ているのである。
それでなくても、突然、第一王女リーヤティアが居なくなったことで、王宮は大騒ぎであるのに、リタ・メタリカの各地では、あの魔王と呼ばれる魔法使いが放ったと思われる魔物達に次々と都が襲われて、数多くの死者が出ているというのだ・・・・
「ウィルタール!お前は今すぐ北のリンデルへ行け!このままでは、エトワーム・オリアも危ないぞ!あそこには【封印の塔】がある!急げ!!」
宮廷付き魔法使いの執務室がある離宮の回廊を、息せいて走っていた少年の背中に、先輩たる魔法使いの青年がそう声をかけてきた。
リンデルとは、王都の北方に聳(そび)えたつカルダタス山脈を越えた場所にある、大街道銀楼の道(エルッセル)の宿場町の名である。
明るい茶色の髪を弾ませて、その青い瞳で背後を振り返った見習魔法使いの少年は、幾分不安そうな顔をしながらも、強く頷いたのだった。
「はい!!」
その少年、ウィルタール・グレイの眼前で、先輩たる魔法使いの青年は、眩い光を纏いながら、一瞬にしてその場から姿を消し去った。
まだ見習いたる彼には、師であるロータスの大魔法使いスターレットや、先程の先輩たる魔法使いのように、瞬時に空間を移動できる力などない。
リタ・メタリカの宮廷付き魔法使い達は、その才能を王に認められた精鋭の集まりだ、まだまだ彼など、その足元にも及ばない。
ウィルタールは、どこか悔しそうに眉根を寄せると、離宮の一室に設置されている【切望の石(ウィシュ・ド・メイル)】に向かって疾走して行った。
魔法使いは、魔剣を操り主に攻撃を専門とする魔法剣士とは持っている質が違う。
空間を自由に行き来することが出来ないのは、魔法剣士とて同じであるが、魔法剣士ほどその力を確立できていない彼には、それ以前の問題であるのだった。