神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
青珠の森の魔豹リューインダイルは、ふと、その金色の視線をあげ、隻眼の守護騎士シルバの本来なら穏やかな印象を与える、精悍で端正な顔を見やった。
『どうやら、そなたの同朋も・・・この先にいるようだな?』
『そのようだ・・・・状況はあまり良くはなさそうだが・・・・・』
澄み渡る紫水晶の右目が、鋭い刃のような輝きを宿したまま、ちらりと、足元を歩くリューインダイルを見る。
『これは死せる竜の気配ではない・・・ただ、何かに封じられてる・・・と言ったところだろう』
『わかるのか?』
『ああ』
リューインダイルは、口を動かさぬままそう言うと、その金色の両目を眼前の木々の合間に見え隠れしている、小さな集落へと向けたのだった。
シルバの隻眼が、彼と同じ方向を向く。
その時、何かに気付いたように、リューインダイルの向こうを歩いていた、秀麗な青珠の守り手レダが、微かに肩を揺らしたのである。
木々の合間から見える小さな集落は、白い闇のような不気味な霧に覆い尽くされていた。
その手前を流れる、澄んだ小川に架けられた橋の袂に、小さな人影が一つ、ぐったりと地面に横たわっているではないか。
『誰かが倒れてる・・・・!?』
鮮やかな紅の瞳を僅かに細めると、呟くようにそう言って、レダは、片手で腰の弓を押さえ、倒れ伏す人影に向かって俊足で走り出したのである。
青い華の紋章が刻まれた綺麗な額で、藍に輝く黒髪が疾風に揺れた。
そんなレダの背中に、どこか焦ったような声色でリューインダイルが言う。
『待て!レダ!!不用意に近づくな!!』
『俺が行く、リューインダイル、サリオを頼む』
シルバの艶のある低い声がそう言うと、走り出そうとしたリューインダイルの眼前に、彼は、長い黒髪と純白のマントを翻したのだった。
レダの後を追って俊足で走り出した彼の背中に、今度は馬上のサリオが叫んだのである。
『あ!待って!シルバ!私も行く!』
『攻撃の術(すべ)を持たぬ貴女は、まだ行かぬ方がいい、我慢なされ』
エメラルドグリーンの髪を揺らし、軽い身のこなしで馬から飛び降りたサリオの衣の裾を、リューインダイルの牙が軽く噛んだ。
サリオは、驚いたように虹色の瞳を大きく見開くと、そんなリューインダイルをまじまじと見る。
『どうやら、そなたの同朋も・・・この先にいるようだな?』
『そのようだ・・・・状況はあまり良くはなさそうだが・・・・・』
澄み渡る紫水晶の右目が、鋭い刃のような輝きを宿したまま、ちらりと、足元を歩くリューインダイルを見る。
『これは死せる竜の気配ではない・・・ただ、何かに封じられてる・・・と言ったところだろう』
『わかるのか?』
『ああ』
リューインダイルは、口を動かさぬままそう言うと、その金色の両目を眼前の木々の合間に見え隠れしている、小さな集落へと向けたのだった。
シルバの隻眼が、彼と同じ方向を向く。
その時、何かに気付いたように、リューインダイルの向こうを歩いていた、秀麗な青珠の守り手レダが、微かに肩を揺らしたのである。
木々の合間から見える小さな集落は、白い闇のような不気味な霧に覆い尽くされていた。
その手前を流れる、澄んだ小川に架けられた橋の袂に、小さな人影が一つ、ぐったりと地面に横たわっているではないか。
『誰かが倒れてる・・・・!?』
鮮やかな紅の瞳を僅かに細めると、呟くようにそう言って、レダは、片手で腰の弓を押さえ、倒れ伏す人影に向かって俊足で走り出したのである。
青い華の紋章が刻まれた綺麗な額で、藍に輝く黒髪が疾風に揺れた。
そんなレダの背中に、どこか焦ったような声色でリューインダイルが言う。
『待て!レダ!!不用意に近づくな!!』
『俺が行く、リューインダイル、サリオを頼む』
シルバの艶のある低い声がそう言うと、走り出そうとしたリューインダイルの眼前に、彼は、長い黒髪と純白のマントを翻したのだった。
レダの後を追って俊足で走り出した彼の背中に、今度は馬上のサリオが叫んだのである。
『あ!待って!シルバ!私も行く!』
『攻撃の術(すべ)を持たぬ貴女は、まだ行かぬ方がいい、我慢なされ』
エメラルドグリーンの髪を揺らし、軽い身のこなしで馬から飛び降りたサリオの衣の裾を、リューインダイルの牙が軽く噛んだ。
サリオは、驚いたように虹色の瞳を大きく見開くと、そんなリューインダイルをまじまじと見る。