神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
カルダタスの岩肌の下方、鋭い岩が切り立つ茶色の岩盤に張り付くようにして、深い霧の最中にぼんやりと見え隠れする、明らかに異様な氷の柱。
その後ろには、洞穴のような暗い空間が狭い口を開けており、まるでその入り口を塞ぐかのように、人の背丈より高い氷柱がそこに立ち尽くしていたのだった。
青く煌(きらめ)く水晶のような六角の透明な氷の中に、その首をうなだれ瞳を閉じた、一人の、美貌の青年の姿がある・・・・。
銀色の長い髪は、術を受けた時のままなのか、冷たい氷の中で乱舞した形で時を止めていた。
彼がまとう白銀の衣が、凍てついた透明な空間の中でキラキラと煌き、その胸元に、先程から、何かを訴えかけるように点滅する青い光があった。
それを眼にした瞬間、シルバの傍らで、レダが小さく叫びを上げたのである。
「・・・・【息吹(アビ・リクォト)】!?」
鮮やかな紅の瞳を驚愕に見開いて、レダは、まるですがりつくように氷の柱に手をかけた。
鋭い紫色の眼差しで、シルバが、凍てつく空間に封じられた、白銀の森のもう一人の守り手アノストラールの姿を見つめすえている。
彼は、腕に抱えていた、あの幼い少女を柔らかい草の上へとゆっくりと横たえると、静かにその長身を起こしたのだった。
半ば呆然とした表情で、氷の中に在る白銀の森の守り手と【息吹(アビ・リクォト)】を直視しながら、レダは呟くように言う。
「どういうこと・・・!?白銀の森の竜をこんな風に封じてしまうなんて・・・・」
「こんな芸当ができるのは・・・・竜狩人(ドラグン・モルデ)の呪文を持つ者しかいない・・・・・どうやら、闇の者の中に、竜狩人(ドラグン・モルデ)がいるようだ」
この状況にあって、尚も冷静さを失わない鋭利な表情でそう言うと、シルバは、深き地中に眠る紫水晶のような澄んだ右目で、ちらりと、草の上でぐったりとしている幼い少女を見た。
そして、その紫色の視線を、レダのしなやかな背中に戻すと、腰に履いた白銀の剣に手をかけながら静かに言葉を続けたのである。
その後ろには、洞穴のような暗い空間が狭い口を開けており、まるでその入り口を塞ぐかのように、人の背丈より高い氷柱がそこに立ち尽くしていたのだった。
青く煌(きらめ)く水晶のような六角の透明な氷の中に、その首をうなだれ瞳を閉じた、一人の、美貌の青年の姿がある・・・・。
銀色の長い髪は、術を受けた時のままなのか、冷たい氷の中で乱舞した形で時を止めていた。
彼がまとう白銀の衣が、凍てついた透明な空間の中でキラキラと煌き、その胸元に、先程から、何かを訴えかけるように点滅する青い光があった。
それを眼にした瞬間、シルバの傍らで、レダが小さく叫びを上げたのである。
「・・・・【息吹(アビ・リクォト)】!?」
鮮やかな紅の瞳を驚愕に見開いて、レダは、まるですがりつくように氷の柱に手をかけた。
鋭い紫色の眼差しで、シルバが、凍てつく空間に封じられた、白銀の森のもう一人の守り手アノストラールの姿を見つめすえている。
彼は、腕に抱えていた、あの幼い少女を柔らかい草の上へとゆっくりと横たえると、静かにその長身を起こしたのだった。
半ば呆然とした表情で、氷の中に在る白銀の森の守り手と【息吹(アビ・リクォト)】を直視しながら、レダは呟くように言う。
「どういうこと・・・!?白銀の森の竜をこんな風に封じてしまうなんて・・・・」
「こんな芸当ができるのは・・・・竜狩人(ドラグン・モルデ)の呪文を持つ者しかいない・・・・・どうやら、闇の者の中に、竜狩人(ドラグン・モルデ)がいるようだ」
この状況にあって、尚も冷静さを失わない鋭利な表情でそう言うと、シルバは、深き地中に眠る紫水晶のような澄んだ右目で、ちらりと、草の上でぐったりとしている幼い少女を見た。
そして、その紫色の視線を、レダのしなやかな背中に戻すと、腰に履いた白銀の剣に手をかけながら静かに言葉を続けたのである。