神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
「レダ、そこを退け・・・・・。
その子の動きに注意しろ・・・どんな仕掛がしてあるか、わからないからな・・・」
「え・・・・?」
シルバの言葉にハッと肩を揺らすと、レダは、ゆっくりと後方に下がりながら、怪訝そうな顔つきでそんな彼の精悍で端正な横顔を見た。
「何を言ってるの?」
「もし、仕掛があれば・・・・すぐに何の事かわかるはずだ」
腰に下げた鞘から、『銀竜の角(ジェン・ドラグナ)』という名の白銀の剣を抜き払うと、シルバは、その精悍で端正な顔を凛と鋭い表情に引き締めたのだった。
本来なら、煌く白銀の鱗を全身に纏い、額に一角の角を抱く銀竜であるはずのアノストラールが、何故、人間の姿で封じられているのか・・・・シルバには、なんとなくその理由がわかっていた。
おそらく、あえて人の姿で戦ったからこそ・・・・封じられてしまったのであろう。
果てしなく白銀に輝く美しい刀身に、ゆらゆらと揺らめくように立ち昇ってくる、触手のような眩い銀色の光。
虚空に伸び上がるその輝きが、剣を構えたシルバの肢体にみるみる絡み付き、やがて、緩やかに彼の周囲を取り囲んでいく。
高い音を立て、空を薙ぐように吹き上がる眩い輝きの中で、艶やかな黒髪と純白のマントが乱舞した。
白銀の光を纏ったまま、シルバは、紫色の右目を鋭く発光させると、構えた剣の鋭利で美しい切っ先を躊躇いも無しに氷の柱へと突き立てたのである。
次の瞬間、優美な白銀の刀身がにわかに激しく発光し、そこから伸び上がった銀色の輝きが、絡み付くように、白銀の森の守り手を封じた冷たい氷の柱を覆い尽くしたのだった。
それを見計らうように、シルバの凛々しい唇が、呪文と呼ばれる人にあらざる古の言語を紡ぎ出したのである。
「『其を結いし鎖 その手足より離(さ)かれ 遍(あまね)く空に還り行く
我は呼ぶ 其が真実なる名 亡き西の竜王の子黒き瞳を持つ者(エル・モルド・スィルッヒ=アノストラール) 其が瞳は開かれし』・・・・来い!アノストラール!寝てる時間は無いぞ!」
シルバの低い叫びが白銀の輝きの中に響き渡ると、凍てついた透明な氷柱の中で、眩い光に包まれた美貌の青年が、カッと大きく両眼を見開いたのだった。
その子の動きに注意しろ・・・どんな仕掛がしてあるか、わからないからな・・・」
「え・・・・?」
シルバの言葉にハッと肩を揺らすと、レダは、ゆっくりと後方に下がりながら、怪訝そうな顔つきでそんな彼の精悍で端正な横顔を見た。
「何を言ってるの?」
「もし、仕掛があれば・・・・すぐに何の事かわかるはずだ」
腰に下げた鞘から、『銀竜の角(ジェン・ドラグナ)』という名の白銀の剣を抜き払うと、シルバは、その精悍で端正な顔を凛と鋭い表情に引き締めたのだった。
本来なら、煌く白銀の鱗を全身に纏い、額に一角の角を抱く銀竜であるはずのアノストラールが、何故、人間の姿で封じられているのか・・・・シルバには、なんとなくその理由がわかっていた。
おそらく、あえて人の姿で戦ったからこそ・・・・封じられてしまったのであろう。
果てしなく白銀に輝く美しい刀身に、ゆらゆらと揺らめくように立ち昇ってくる、触手のような眩い銀色の光。
虚空に伸び上がるその輝きが、剣を構えたシルバの肢体にみるみる絡み付き、やがて、緩やかに彼の周囲を取り囲んでいく。
高い音を立て、空を薙ぐように吹き上がる眩い輝きの中で、艶やかな黒髪と純白のマントが乱舞した。
白銀の光を纏ったまま、シルバは、紫色の右目を鋭く発光させると、構えた剣の鋭利で美しい切っ先を躊躇いも無しに氷の柱へと突き立てたのである。
次の瞬間、優美な白銀の刀身がにわかに激しく発光し、そこから伸び上がった銀色の輝きが、絡み付くように、白銀の森の守り手を封じた冷たい氷の柱を覆い尽くしたのだった。
それを見計らうように、シルバの凛々しい唇が、呪文と呼ばれる人にあらざる古の言語を紡ぎ出したのである。
「『其を結いし鎖 その手足より離(さ)かれ 遍(あまね)く空に還り行く
我は呼ぶ 其が真実なる名 亡き西の竜王の子黒き瞳を持つ者(エル・モルド・スィルッヒ=アノストラール) 其が瞳は開かれし』・・・・来い!アノストラール!寝てる時間は無いぞ!」
シルバの低い叫びが白銀の輝きの中に響き渡ると、凍てついた透明な氷柱の中で、眩い光に包まれた美貌の青年が、カッと大きく両眼を見開いたのだった。