神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
『でも!・・・アノス!だって私は、シルバと離れたくないもの!!』
涙目の彼女がアノストラールを振り返った瞬間、白銀の衣を纏う彼の腕が、強引に彼女の体をシルバの元から離したのである。
『聞き分けのない子だな、そなたは?』
『やだ!離して!アノス!!』
じたばたともがくサリオの体をしっかりと腕に抱きかかえたまま、アノストラールの黒い瞳が、ふと、どこか困ったような表情をするシルバの端正な顔を見た。
『行くがいいシルバ。
白銀の森の事は心配するな、私が守るゆえ・・・・だが、決して・・・死ぬでないぞ・・・』
感慨深い彼のその言葉に、シルバは、広い肩を僅かにすくめると、やけに穏やかに微笑して小さく頷いたのだった。
『ああ・・・・』
『時々、様子を見に行く・・・・・・気をつけろ』
『おまえに言われなくとも』
シルバの答えにアノストラールは、くったくなく微笑すると静かに首を縦に振った。
不意に、そんな彼の肢体を銀色の輝きを伴う旋風が包み込んだ。
類まれな美貌を持つ彼の背に大きな白銀の翼が伸び上がると、音もなく巻き起こる銀の風の中で、優美なその姿がゆるやかに変化していき、やがて、人であった彼の姿は、輝くばかりの白銀の鱗を全身に纏い、その額に一角の角を持つ、美しい銀竜の姿へと成り果てたのである。
『シルバ!必ず帰って来て・・・・必ず!!』
本来の姿に戻ったアノストラールの掌から、今にも泣き出しそうな顔のサリオが叫んだ。
同時に、眩いばかりの白銀の輝きが周囲に乱舞すると、大きな光の球が巨大な銀竜とそして、妖精の少女の姿を一瞬にして包み込んだのである。
弾けるような閃光が虚空にほとばしり、それが大きく伸び上がると、次の瞬間、その姿は、吸い込まれるように空間の狭間へと消えて行ったのだった。
急速に遠ざかっていく、白銀の森の姫を抱いた銀竜の気配。
周囲に迸る銀色の閃光が、完全にその場から消え失せた時、カルダタスの峰より吹き付ける冷たい風だけが、横たわる瓦礫の合間を深い森に向け、ざわめきながら渡っていく。
涙目の彼女がアノストラールを振り返った瞬間、白銀の衣を纏う彼の腕が、強引に彼女の体をシルバの元から離したのである。
『聞き分けのない子だな、そなたは?』
『やだ!離して!アノス!!』
じたばたともがくサリオの体をしっかりと腕に抱きかかえたまま、アノストラールの黒い瞳が、ふと、どこか困ったような表情をするシルバの端正な顔を見た。
『行くがいいシルバ。
白銀の森の事は心配するな、私が守るゆえ・・・・だが、決して・・・死ぬでないぞ・・・』
感慨深い彼のその言葉に、シルバは、広い肩を僅かにすくめると、やけに穏やかに微笑して小さく頷いたのだった。
『ああ・・・・』
『時々、様子を見に行く・・・・・・気をつけろ』
『おまえに言われなくとも』
シルバの答えにアノストラールは、くったくなく微笑すると静かに首を縦に振った。
不意に、そんな彼の肢体を銀色の輝きを伴う旋風が包み込んだ。
類まれな美貌を持つ彼の背に大きな白銀の翼が伸び上がると、音もなく巻き起こる銀の風の中で、優美なその姿がゆるやかに変化していき、やがて、人であった彼の姿は、輝くばかりの白銀の鱗を全身に纏い、その額に一角の角を持つ、美しい銀竜の姿へと成り果てたのである。
『シルバ!必ず帰って来て・・・・必ず!!』
本来の姿に戻ったアノストラールの掌から、今にも泣き出しそうな顔のサリオが叫んだ。
同時に、眩いばかりの白銀の輝きが周囲に乱舞すると、大きな光の球が巨大な銀竜とそして、妖精の少女の姿を一瞬にして包み込んだのである。
弾けるような閃光が虚空にほとばしり、それが大きく伸び上がると、次の瞬間、その姿は、吸い込まれるように空間の狭間へと消えて行ったのだった。
急速に遠ざかっていく、白銀の森の姫を抱いた銀竜の気配。
周囲に迸る銀色の閃光が、完全にその場から消え失せた時、カルダタスの峰より吹き付ける冷たい風だけが、横たわる瓦礫の合間を深い森に向け、ざわめきながら渡っていく。