神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
「本当に変わったお姫様だな、おまえは?・・・・まぁ、おまえには、王宮より戦場の方が似合ってそうだが」
「それはどういう意味なのです?」
例によって例の如く、揺れる紺碧色の前髪の下で綺麗な眉を吊り上げたリーヤに、ジェスターは愉快そうな表情で片手を上げて見せたのだった。
「言葉の通り、誉め言葉だよ」
「そうですか?私にはそうは聞こえませんでしたが?」
「おまえの耳が節穴なんだろ?」
「なんですって!?」
リーヤの大きな瞳が、ギロリとジェスターの凛々しく端正な顔を睨みつける。
夕闇の風に、彼女の羽織る緋色のマントが虚空へと翻った。
彼女が、彼に向かって反論しようと、桜色の唇を開きかけた、その次の瞬間。
不意に、ランドルーラを目前にした街道の最中に、耳をつんざくようなけたたましい悲鳴が響き渡ったのである。
「きゃああああ-――――っ!!」
ジェスターの緑玉の両眼と、リーヤの紺碧の両眼が、ほぼ同時に鋭利な輝きを閃かせた。
「なんですか、今の悲鳴は!?」
「さぁな」
そう言って前方を見たジェスターの鋭い視線の先に、茜に染まる夕闇に浮かび上がる四台の幌馬車があった。
その周りをぐるりと取り囲む、数十人はいるであろう実に人相の悪い男達の集団。
恐らく、この辺りを根城にしている盗賊だろう。
馬車の中から、次々と男達を引きずり下ろし、無抵抗な者までも容赦もなく斬り飛ばすと、ありとあらゆる金目の物を奪い取り、けたたましい悲鳴を上げる女達をも、そこから担ぎ出そうとしているではないか・・・・
「それはどういう意味なのです?」
例によって例の如く、揺れる紺碧色の前髪の下で綺麗な眉を吊り上げたリーヤに、ジェスターは愉快そうな表情で片手を上げて見せたのだった。
「言葉の通り、誉め言葉だよ」
「そうですか?私にはそうは聞こえませんでしたが?」
「おまえの耳が節穴なんだろ?」
「なんですって!?」
リーヤの大きな瞳が、ギロリとジェスターの凛々しく端正な顔を睨みつける。
夕闇の風に、彼女の羽織る緋色のマントが虚空へと翻った。
彼女が、彼に向かって反論しようと、桜色の唇を開きかけた、その次の瞬間。
不意に、ランドルーラを目前にした街道の最中に、耳をつんざくようなけたたましい悲鳴が響き渡ったのである。
「きゃああああ-――――っ!!」
ジェスターの緑玉の両眼と、リーヤの紺碧の両眼が、ほぼ同時に鋭利な輝きを閃かせた。
「なんですか、今の悲鳴は!?」
「さぁな」
そう言って前方を見たジェスターの鋭い視線の先に、茜に染まる夕闇に浮かび上がる四台の幌馬車があった。
その周りをぐるりと取り囲む、数十人はいるであろう実に人相の悪い男達の集団。
恐らく、この辺りを根城にしている盗賊だろう。
馬車の中から、次々と男達を引きずり下ろし、無抵抗な者までも容赦もなく斬り飛ばすと、ありとあらゆる金目の物を奪い取り、けたたましい悲鳴を上げる女達をも、そこから担ぎ出そうとしているではないか・・・・