神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
*
シァル・ユリジアン最大の大国リタ・メタリカを統治する王の世代は、ダファエル三世。
栄華を誇るこの王の居城スターリン城は、その美観よりも有事の際に適した強固な作りの無骨で巨大な城であった。
難攻不落のこの城に侵入して来た敵軍など、築城以来全く無いと豪語されているほどである。
黒衣の夜空に浮かんだ満月が、うっすらと朧な雲の衣を身につけた時、よく手入れされた城の中庭に、上質の絹で織られたドレスをまとった若い女性が一人・・・・・誰かを探すようなそぶりで足を踏み出していた。
月明かりに照らし出される、流れるような紺碧色の長い巻髪。
くっきりとした大きな瞳もまた、晴れ渡る空のような紺碧色。
金色の月明かりの下、なだらかな肩に羽織られたローブが夜風に揺れる。
秀麗で綺麗な頬に、その紺碧色の髪束が触れた時、彼女のその大きな瞳に、もう見慣れた青年の姿が映ったのだった。
端正で知的な横顔。
その透き通る蒼銀の艶(つや)やかな髪が、天空から差し込む月影に金色に輝いていた。
時折、美しいと形容される彼の雅やかな顔が、いつになく険しい表情で空を仰いでいることに、 彼女は、僅かに肩を震わせる。
「スターレット・・・・・?」
彼女は、どこか戸惑ったように彼の名を呼んだ。
その声に、彼は、蒼銀の前髪の隙間から覗く綺麗な銀水色の両目を、ゆっくりと彼女の方へ向けたのである。
「リタ・メタリカ王家の内親王殿下が、このような時間に出歩くなどと・・・・女官長に叱られますよ?リーヤ姫?」
ふと、いつものように穏やかに微笑むと、彼は、真っ直ぐにこちらを見つめている、リタ・メタリカの王女リーヤティアの秀麗な顔を顧みたのだった。
そんな彼の微笑にほっとしたのか、桜色の唇で彼女は小さく笑う。
「部屋の窓から、貴方が見えたのです・・・・・随分と怖い顔をしていたわね?
・・・・・スターレット?」
どこか愛しそうな眼差しでこちらを見つめ、わずかばかり遠慮がちに紡がれた彼女の言葉に、彼、スターレット・ノア・イクス・ロータスは、大国の美しい姫君に向かってもう一度、穏やかに微笑んで見せたのである。
シァル・ユリジアン最大の大国リタ・メタリカを統治する王の世代は、ダファエル三世。
栄華を誇るこの王の居城スターリン城は、その美観よりも有事の際に適した強固な作りの無骨で巨大な城であった。
難攻不落のこの城に侵入して来た敵軍など、築城以来全く無いと豪語されているほどである。
黒衣の夜空に浮かんだ満月が、うっすらと朧な雲の衣を身につけた時、よく手入れされた城の中庭に、上質の絹で織られたドレスをまとった若い女性が一人・・・・・誰かを探すようなそぶりで足を踏み出していた。
月明かりに照らし出される、流れるような紺碧色の長い巻髪。
くっきりとした大きな瞳もまた、晴れ渡る空のような紺碧色。
金色の月明かりの下、なだらかな肩に羽織られたローブが夜風に揺れる。
秀麗で綺麗な頬に、その紺碧色の髪束が触れた時、彼女のその大きな瞳に、もう見慣れた青年の姿が映ったのだった。
端正で知的な横顔。
その透き通る蒼銀の艶(つや)やかな髪が、天空から差し込む月影に金色に輝いていた。
時折、美しいと形容される彼の雅やかな顔が、いつになく険しい表情で空を仰いでいることに、 彼女は、僅かに肩を震わせる。
「スターレット・・・・・?」
彼女は、どこか戸惑ったように彼の名を呼んだ。
その声に、彼は、蒼銀の前髪の隙間から覗く綺麗な銀水色の両目を、ゆっくりと彼女の方へ向けたのである。
「リタ・メタリカ王家の内親王殿下が、このような時間に出歩くなどと・・・・女官長に叱られますよ?リーヤ姫?」
ふと、いつものように穏やかに微笑むと、彼は、真っ直ぐにこちらを見つめている、リタ・メタリカの王女リーヤティアの秀麗な顔を顧みたのだった。
そんな彼の微笑にほっとしたのか、桜色の唇で彼女は小さく笑う。
「部屋の窓から、貴方が見えたのです・・・・・随分と怖い顔をしていたわね?
・・・・・スターレット?」
どこか愛しそうな眼差しでこちらを見つめ、わずかばかり遠慮がちに紡がれた彼女の言葉に、彼、スターレット・ノア・イクス・ロータスは、大国の美しい姫君に向かってもう一度、穏やかに微笑んで見せたのである。