神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
それをちらりと見やると、不気味に微笑んだまま、ゼラキエルは、再びその言語を古の言葉に換えて、遥か昔、自らの妻となるはずだった女性の名を呼んだのだった。
『レイノーラ』
とたん、ラレンシェイの美麗な顔が再び苦悶の表情に歪む。
「あぁっ!!」
思わず取り落とした松明が暗い床に転げ落ちて、一際激しく燃え盛った。
暗黒の壁にゆらゆらと映し出される彼女の影が、あえぐように床にうずくまる。
綺麗な額に刻まれた炎の烙印が、禍々しく眩く発光すると、鋭利な茶色の両眼は、再び深い青玉の色に変わり果てたのだった。
荒い息をしたまま、彼女はゆっくり美麗な顔を上げる。
魔王の妻となるはずだった女性、レイノーラが、実に不愉快そうな表情で、再び、そこに姿を現した。
『なんと強情な者なのでしょう!この女!!』
『・・・・・・』
ゼラキエルは、片手を額に当てるとくっくっと声を殺して笑った。
冷酷で美しい緑玉の両眼が、なにやら思惑有りげに細められている。
ゆらりと深い藍の髪が黒衣の肩で揺れた。
ロータスの者よ・・・・取り戻せるなら取り戻して見るがいい・・・
それは、そなたの死か、この女の死か、そのどちらかしかないのだ・・・・
闇の城を取り囲む暗黒の結界が、ゆるやかに白い霧を孕んでざわめいた。
『レイノーラ』
とたん、ラレンシェイの美麗な顔が再び苦悶の表情に歪む。
「あぁっ!!」
思わず取り落とした松明が暗い床に転げ落ちて、一際激しく燃え盛った。
暗黒の壁にゆらゆらと映し出される彼女の影が、あえぐように床にうずくまる。
綺麗な額に刻まれた炎の烙印が、禍々しく眩く発光すると、鋭利な茶色の両眼は、再び深い青玉の色に変わり果てたのだった。
荒い息をしたまま、彼女はゆっくり美麗な顔を上げる。
魔王の妻となるはずだった女性、レイノーラが、実に不愉快そうな表情で、再び、そこに姿を現した。
『なんと強情な者なのでしょう!この女!!』
『・・・・・・』
ゼラキエルは、片手を額に当てるとくっくっと声を殺して笑った。
冷酷で美しい緑玉の両眼が、なにやら思惑有りげに細められている。
ゆらりと深い藍の髪が黒衣の肩で揺れた。
ロータスの者よ・・・・取り戻せるなら取り戻して見るがいい・・・
それは、そなたの死か、この女の死か、そのどちらかしかないのだ・・・・
闇の城を取り囲む暗黒の結界が、ゆるやかに白い霧を孕んでざわめいた。