神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
だが、このアノストラール、ある日を境に忽然と森に戻らなくなってしまったのだ。
アノストラールは、その姿を自在に変化させ、膨大な魔法を操る竜族である。
そんな彼が姿を消してしまうなど、普通に考えればやはり尋常なことではない。
『アノスはきっと、どこかで闇の者と遭遇したんだと思う・・・・』
シルバの広い肩ごしに、虹色の瞳で彼の横顔を覗き込みながら、サリオは、どこか確信したようにそう言った。
シルバは、そんな彼女にちらりと紫水晶の右瞳を向けながら、低く艶のある声で答えて言うのである。
『それしか考えられないな・・・・まぁ、あやつが、闇の者に負けるようなことは無いと思うが・・・・・』
『アノスの気配が消えたのは、カルダタスの最中だったから・・・行けばきっと何かわかると思うの・・・それに』
『それに?』
『青珠の森にも・・・・異変が起きてる・・・そんな気がする』
『【魔王の種】が持ち出されたから、か・・・・?』
どこか鋭く輝く紫水晶の右目で、緩やかに近づいてくるカルダタスの高峰を見つめすえながらそう言ったシルバに、サリオは小さく頷いた。
天空を駈ける疾風が、今、大きく唸りを上げた。
アノストラールは、その姿を自在に変化させ、膨大な魔法を操る竜族である。
そんな彼が姿を消してしまうなど、普通に考えればやはり尋常なことではない。
『アノスはきっと、どこかで闇の者と遭遇したんだと思う・・・・』
シルバの広い肩ごしに、虹色の瞳で彼の横顔を覗き込みながら、サリオは、どこか確信したようにそう言った。
シルバは、そんな彼女にちらりと紫水晶の右瞳を向けながら、低く艶のある声で答えて言うのである。
『それしか考えられないな・・・・まぁ、あやつが、闇の者に負けるようなことは無いと思うが・・・・・』
『アノスの気配が消えたのは、カルダタスの最中だったから・・・行けばきっと何かわかると思うの・・・それに』
『それに?』
『青珠の森にも・・・・異変が起きてる・・・そんな気がする』
『【魔王の種】が持ち出されたから、か・・・・?』
どこか鋭く輝く紫水晶の右目で、緩やかに近づいてくるカルダタスの高峰を見つめすえながらそう言ったシルバに、サリオは小さく頷いた。
天空を駈ける疾風が、今、大きく唸りを上げた。