お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「じゃあな!」
「うん、またね!」
水族館を出て、わたし達は別れた。
わたしは、イルカのマスコットをバッグの下に入れ、家へと向かった。
鍵を開けて、家のドアを開ける。
「ただいま、お母さん!」
「おかえり、沙織。デートは楽しかった?」
「でっ、デートじゃないよっ!」
大声を出して、わたしはかなりすごい顔をしていたのか、お母さんはぷっと吹き出した。
「そんな大げさな顔しなくて、いいのよ」
「もう、お母さんが変なこと言うからじゃん。お父さんには内緒だよ!」
「大丈夫、黙ってるよ。お母さんにこっそり教えて?」
「楽しかったよ、すごく。わたしが見たがってたもの、全部見せてもらえた」
わたしは何故か込み上げてきた、くすぐったい気持ちをおさえて言った。
「そう、良かったわね。優しい子で」
「うん」
美咲にだけじゃなく、お母さんにまでデートと思われているのか。
嗚呼、いやんなっちゃう。
わたしは、そう思いながら2階の部屋に駆け上がった。