お前がいる場所が、好き。Ⅰ

美術の授業が終わり、美術室から出て奈緒と美咲と一緒に教室へ戻っている最中、廊下で「ええっ!」という大声が聞こえた。



「もしかして桜花、言うの!?」



モデルのように背が高く、ほっそりした女の子が桜花ちゃんに話しかけている。



「うん、言ってみようと思う」



薄いピンク色に頰を染めて、桜花ちゃんは頷いている。



「うわー、すごいじゃん! 頑張れ!」



背の高い子は、桜花ちゃんの背中を叩いた。



「頑張っておいで! 絶対に成功すると思うよ!」



「ありがとう。もう後悔したくないから、言うよ!」



そんな話をしながら、桜花ちゃん達はわたし達が見ていることも全く気づかずに教室に戻っていった。



「なんだろう……」



「言うって、何を誰に……?」



奈緒も美咲も、わたしと同じように首を傾げている。



「そして、成功するっていうのもねぇ……。なんだろう?」



「あんまり関わらない方がいいよ。だって、沙織は栗原さんに湖に落とされてから、一度も話してないんじゃない?」



「あ、確かに!」



奈緒に言われて、わたしは思い出した。あれから、桜花ちゃんと全く関わっていない。



「じゃあ、あんまり栗原さんに近づくのは、よした方がいいよ」



確かに奈緒の言う通りだ。



「そうだね、そうする」



わたしは、頷いた。




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