お前がいる場所が、好き。Ⅰ
帰りのホームルームも終わり、わたしは何気なく下校していた。
あれ、とわたしは思った。
帰り道に通る小学校の近くに、人がいる。
寺本と、桜花ちゃんだ。
「陸男くん、懐かしいね」
「……ああ」
「この小学校は、変わってないね」
「……ああ」
懐かしい、この小学校は変わってない……。
そういえば、寺本と桜花ちゃんって、小学校・中学校の頃は、同じ学校に通っていたと言っていた。
ということは、2人は小学生の頃、この学校に通っていたということなのだろうか。
ふと、カラフルなランドセルを背負った小学生達が2人の横を通り過ぎた。
「ここに通ってた頃は、あの子達みたいに小さかったね」
「……ああ」
ここに通っていた頃。
やっぱり、そうなんだ。この学校に、2人は行っていたのか。
「あのね、わたし、寺本くんのことが好きなの。小学生の頃もずぅーっと気になってて。卒業した後も忘れられなくて。だから、会えてよかった。わたし、寺本くんが好き」
そう言い終わってから、彼女は頭を下げた。
「もしよかったら、わたしと付き合ってください」
「……返事、考えさせてくんね?」
決まり悪そうに、寺本は答えた。
「うん。待ってるからね。どんな返事でも」
「サンキュ。栗原」
彼がお礼を言うと、桜花ちゃんも頷いて2人は別れた。
わたしは、しばらく別れていく2人を見て、あちこち目を動かしていた。