お前がいる場所が、好き。Ⅰ

帰りのホームルームも終わり、わたしは何気なく下校していた。


あれ、とわたしは思った。
帰り道に通る小学校の近くに、人がいる。


寺本と、桜花ちゃんだ。



「陸男くん、懐かしいね」



「……ああ」



「この小学校は、変わってないね」



「……ああ」



懐かしい、この小学校は変わってない……。
そういえば、寺本と桜花ちゃんって、小学校・中学校の頃は、同じ学校に通っていたと言っていた。


ということは、2人は小学生の頃、この学校に通っていたということなのだろうか。


ふと、カラフルなランドセルを背負った小学生達が2人の横を通り過ぎた。



「ここに通ってた頃は、あの子達みたいに小さかったね」



「……ああ」



ここに通っていた頃。
やっぱり、そうなんだ。この学校に、2人は行っていたのか。



「あのね、わたし、寺本くんのことが好きなの。小学生の頃もずぅーっと気になってて。卒業した後も忘れられなくて。だから、会えてよかった。わたし、寺本くんが好き」



そう言い終わってから、彼女は頭を下げた。



「もしよかったら、わたしと付き合ってください」



「……返事、考えさせてくんね?」



決まり悪そうに、寺本は答えた。



「うん。待ってるからね。どんな返事でも」



「サンキュ。栗原」



彼がお礼を言うと、桜花ちゃんも頷いて2人は別れた。


わたしは、しばらく別れていく2人を見て、あちこち目を動かしていた。




< 113 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop