お前がいる場所が、好き。Ⅰ
翌日。
塾での授業が終わり、わたしはいつも通り奈緒と美咲と家に帰り始めた。
「寺本!」
塾を出ると、歩いている寺本が目に入った。わたしが2人を置いて走っていくと、彼が目を丸くして、
「増山……。なんかあったか?」
と聞いた。
「その……」
告白されているところを見たことなんて知ったら、彼は気分が良くなるわけがない。
けれど、ここまで来てしまったら素直に言うしかない。
「ごめんなさい! わたし、見ちゃったの」
頭を下げて、わたしは謝った。
幸い、道にはわたし達以外誰もいなかったので他人に聞かれることはなかった。
けれどもうこれじゃあ、お母さんのお許しが出ても寺本と湖で過ごすことはできなくなりそうだな。
「見たって……?」
「あの、寺本……。桜花ちゃんに告白されたでしょう? あそこ、わたし、見ちゃったの」
わたしが言うと彼は、信じられない、という顔をして言った。
やっぱり、寺本はわたしの気配に全く気づかなかったのか。
「どうやって?」
「あそこ、学校の帰り道だったから……」
言っている間に、わたしの声はどんどん小さくなる。
「桜花ちゃんに、まだ返事してないんでしょ?」
「ああ、受け入れるか断るか……。そういうのは決まってるんだけど、どう言えばいいのか」
「決まってるなら、早く言った方がいいよ!」
思わず口から予想以上に大きな声が出た。