お前がいる場所が、好き。Ⅰ
「こうやって伸ばしてる間にも、桜花ちゃんは待ってるんだよ!」
少しびっくりしたような感じで、彼はわたしのことをじっと見ている。
「なんで、どう言えばいいのか、そんなことを深く考えちゃうの? まっすぐに気持ちを言う。これでいいんだよ?」
寺本は、腕を組んで考え込み始めた。
数秒後、無言で頷いてから、
「……お前がそこまで言うなら分かった。明日、栗原を呼ぶよ」
と言った。
「そうした方がいいよ、じゃあね!」
わたしはそう言って、寺本に手を振りながら奈緒と美咲のところへ戻った。
「沙織、栗原さんに寺本を渡しちゃっていい訳?」
話を聞いていた美咲が不安そうに眉にしわを寄せながら聞いた。
……本当は渡したくないんだけど。
「そうするしかないんだもの」
唇を噛み締め、うつむきながらわたしは言った。
「また湖に落とされる、なんてことになったらやばいから」
「……栗原さんが寺本と付き合うってまだ決まったわけじゃないし、多分付き合ったとしても長続きはしないと思うよ。栗原さんがやったこと、いつかはボロが出るだろうし」
奈緒がわたしの頭を撫でながら、そう言った。