お前がいる場所が、好き。Ⅰ
翌日の放課後。
下校していると、この間と同じ制服を着た少し離れた場所に男女が見えて、思わずわたしは足を止めた。
……寺本と桜花ちゃんだ。
また、あんなところに2人でいる。きっと今度は、寺本が桜花ちゃんにあの時の返事をするから来るように頼んだんだろう。
「栗原……。ああいう風に言ってくれて、ありがとうな。でも、俺はお前の彼氏にはなれないんだ」
……え? これって、桜花ちゃんは振られた、ということ?
予想とは全然違う彼の言葉に、わたしは耳を疑った。
「栗原が嫌いってわけじゃないんだよ。それは、分かってほしいんだ」
「……もういいの。それだけ聞けたら、もう充分だから」
桜花ちゃんは、それだけの言葉を残しては、背中まである黒髪を揺らしながら、遠くの方へ走り去っていった。
「ちょっ……。栗原っ」
寺本が追いかけようとしたけれど、桜花ちゃんの方を見ると足を止めることなく走り続け、次第に小さくなった。
彼女の背中が完全に見えなくなったとほぼ同時に、はぁ、と彼が溜息を吐くような息が聞こえた。
振られたのが、彼女は相当ショックを受けたのだろうか。まあ、友達に「絶対上手くいく」なんて言われたというのに、結果は上手くいかなかったんだから。