お前がいる場所が、好き。Ⅰ
彼女の背中を最後まで見ていた彼は、わたしの方をちらりと見た。
「増山」
わたしの名前を呼びながら、近づいてくる寺本。
「て、寺本……」
「告白の返事、しといた」
そう言いながら、寺本は小さく笑う。
「したんだ……」
「ん。振った」
振っているところは当然見ていたけれど、わたしはあえて、
「な、なんで振っちゃったの?」
と、聞いていなかったように驚いた感じで尋ねた。
「は? お前が言ったんだろ」
わたしが聞くことじゃないと思ったように、いぶかしげに彼は言った。
「いやいや、わたしはてっきり付き合うのかと思って……」
「お前がさ、俺のことをどう思っているのかどうか知らねえけど。俺と栗原が付き合うってことになったら……」
急に空が光り出して、その後ガラガラと音が響き、雨も降ってきた。
「あ……」
雷だ。
そういえば、今朝お母さんが夕方ごろから雷になるとか言っていたっけ。
「ごめん。話は、また今度な」
「うん。じゃあね」
わたしと寺本は、小走りで別々の帰り道を歩いた。